羽田の16L/Rへの着陸について質問です。

いつも参考になる記事をありがとうございます。
今年の7月から、羽田空港への着陸経路が大きく変わりますが、管理人様はPMSについてどのような感想をお持ちでしょうか?
また、2020年の夏ダイヤから、羽田空港のRWY16側への着陸も始まります。元パイロットの方々が危険性を指摘したりしていますが、管理人様はどうお考えでしょうか?
ぜひ教えてください。
By potさん
回答
potさん、ご質問ありがとうございます。
羽田の拡張について、とてもいい質問ですね。
オリンピックを始めとする東京へのインバウンド増加で、羽田空港の発着枠を拡大するためにその着陸経路、離陸経路が変わります。
現在は羽田空港では北風の時と南風の時に分けて滑走路の運用が行われています。
北風時の出発は原則としてですが、西行きの飛行機はRW05を用いて、北行きの飛行機はRW34Rを使い、到着機に対しては西からの飛行機にはRW34Lを、北からの飛行機にはRW34Rがアサインされます。
南風時の運用では、同様に出発機はRW16Lと16Rを用い、到着機に対してはRW22とRW23を用います。日によって飛行機の飛んでいる経路が違うのはこのためです。
しかし、この方式では不都合があります。
南風運用時において、RW22/23にApproachしてくる航空機は、特に西からの飛行機(この数が多い)は人口密集地域の上空を避けるために東京の南海上から一度空港の東に大きく出て、そこから定められたApproach経路を飛ばなければならないので時間がかかり、混雑し、それが羽田空港のオペレーションを圧迫しています。
これを、南風時の到着機にRW 16L/Rをアサインし、都心部の上も飛べるようにすることで羽田空港周辺の飛行機の流れをスムーズにすることを目的としています。(という僕の理解です)
しかしするとその地域に住んでいる人にとってはたまったものじゃないわけで、騒音や、飛行機からの落下物が落ちてきたら危険です。そのことで国土交通省と地域住民の話合いが進められてきました。
と、ここまで書いておいてなんですが、こちらの記事で凄まじくわかりやすく説明されていました。

また、国土交通省のHPでも説明されていますね。
https://www.mlit.go.jp/koku/haneda/international/measure.html
potさんの言う危険性というのは、上の2つのPageで言及されている3.5°の降下角のことを言っているのだと思います。通常は飛行機は最終進入において、3°のパスで降下します。これを3.5°に引き上げることで人口密集地の飛行を少しでも高い高度に上げようとする、苦肉の策みたいなものでしょうか。
イギリスのヒースロー国際空港でも同様の取り組みが行われたことがあるようです。
https://ameblo.jp/minatono-kai/entry-12499345929.html
しかし、こちらは降下角は3.25°とだいぶ緩やかですね。
じゃあ管理人がこれについてどう考えるか、ということですが、難しいですね。
僕も初めて聞いた時は、まじか。って思いました。
また事実、この進入方式について疑問に思っているパイロット、航空会社の社員はたくさんいます。僕の感覚では、圧倒的反対多数というイメージでしょうか。
しかしもう少しまじめに考えてみましたが、この3.5°パスが危険かどうかは、検証してみないと分からないと思います。現に、これから各航空会社とこのApproach方式について検証が行われるそうです。
High PATHからのApproachというのは相対的には危険と言えると思いますが、しっかりと検証され、準備され、手順が確立され、そのリスクが受け入れ可能なレベルにまで下げられているならば、それは安全と言えると思います。だから危険とならないようにこれからちゃんと検証して、準備して、それで絶対大丈夫となればやればいいし、それでもやっぱり危ないねってなるのであれば辞めるべきだと思います。
一方で僕が違和感を感じるのは、3.5°パスにすることで
どれだけの騒音低減効果があるんだろう?ということですね。
パイロットの定石としてはHIGH PATHでApproachを行わなければならない場合にはDRAG(抗力)を作るためにランディングギアを早く下ろしたくなりますが、すると騒音はむしろ大きくなっちゃうんじゃないの?って気もするし、3.5°パスにすることのリスクと、騒音低減効果とが見合ったものなのか、疑問に思います。
まあ僕のような末端のパイロットがどうこう言うことではないのかもしれませんが、やるとなればそのリスクを認識して、安全なOperationを行うことがパイロットの勤めなのでしょう。
動向を見守っていきたいと思います。