医学部からパイロットへの道
こんにちは。某国立大学医学部医学科2年生の者です。
飛行機好きの父の影響で小さい頃からパイロットになるのが夢でした。ただ、医学に純粋に興味があり、大学は医学部へ進学しました。現在、2年生ですが、パイロットになるための残された道は自社養成パイロットか航空大学の2つだと考えています。
病院実習が4年生から始まるのですが、その前に医学部を辞め、航空大学を受験するか、6年生で自社養成、航空大学を受験し、医師免許を取得したあと、パイロットを目指すかで悩んでいます。
お忙しいとは思いますが、アドバイスをいただけると嬉しいです。
よろしくお願いします。
By TETSUさん
回答
TETSUさん、ご質問ありがとうございます。
とうとう出てきましたね、台風。台風が飛行機にとって脅威なのは一般的に常識だと思いますが、何が怖いのかじっくり考えたことがある人は少ないんじゃないかと思います。
台風には様々な、むしろあらゆる悪天現象を含んでいると言えそうですが、その中で離着陸に影響を及ぼす悪天が怖いとされています。
その代表的なものが「ウインドシア」で、一言でいうと「風の急激な変化」ということになります。
台風の風を日常生活で経験したことがある人は多いとは思いますが、凄まじい風が急激に吹いてきたり、方向が変わったりすると思います。これが飛行機にとって非常に危険です。
パイロットの教える航空宇宙工学のところでも触れていますが、飛行機を宙に浮かす力を揚力と言いますが、これは数式で表すと
揚力(Lift)=1/2 ρ(空気密度)V(対気速度)^2 S(翼面積) CL(揚力係数)
となります。このV:対気速度とは空気に対する飛行機の速度で、これが2乗で効いています。
かなりざっくりとした議論ですが、だいたい飛行機は着陸時130ktくらいのSPDだとして、急に50ktの突風(台風ではよくある数字です)が吹くと合計180ktのVとなり、V^2の値は130×130=16900から、180×180=32400となり約2倍となりますね。つまり、揚力が2倍になってしまって、飛行機は持ち上げられます。だからパイロットの操作としては、操縦桿を押してエレベーターを操作し、揚力係数を小さくすることで平衡を保とうとします。
この逆が怖くて、50ktの風が急激に無くなったり、50ktの後ろからの突風がきた場合には、飛行機は揚力を急激に失い、地面に叩きつけられる可能性があります。
だから風の強い時間帯(台風が最接近する時間帯)には航空会社は安全のため、飛行機を欠航とさせるわけです。
さて、前置きが長くなりましたが回答です。医学部からパイロットへ。
ずいぶん贅沢な悩みですが、医学部を辞めることまで考えているとは、真剣そのものなのだと思います。
どうするかは君の価値観によると思います。パイロットが小さい頃からの夢だということだし、今君が持っているとても素晴らしい環境を捨ててまで今航空大学へ行く価値があるのか、それは君にしかわからないことだと思います。
あくまで僕だったら、という話ですが、僕が君の立場だったら迷わず医師免許を取得してからパイロットを目指すでしょう。パイロットになれる可能性という枠で見て、そう選択することがパイロットになれる可能性をトータルで見て下げるとしても、そうすると思います。
それは僕がどちらかというと慎重な人間だからかもしれないし、パイロットへの志望度が君よりも低かったかもしれない。
また話は少しずれますが、僕の知り合いに医学部出身のパイロットはいませんが、このブログで昔そんな方がいますよと聞いたことがあります。
また知り合いで、獣医学部で免許をとってからパイロットになった方がいます。
まあだからなんだ、という話ではありますが。
もう一つ、僕が思うことは、夢を追いかけるのはすごく立派なことだし、このブログもそういう人を応援したいと思っているものだけど、自分が一生懸命頑張って積み上げてきたものもまたすごく尊いものだと思います。
国立大学の医学部なんて、相当の努力があってのことだと思います。
確かにそれに囚われてはいけないんだけど、また医学部を辞めることでその努力が無駄になるわけでもないんだけど、やっぱり僕にはちょっともったいないなぁ、と思ってしまいます。歳かもしれませんね。
そんなとこです。参考にならずすみません。
P.S 眼科医さん、どうお考えですか?
お時間の許すときにでもご意見を頂ければ興味深いなと思います。