航空身体検査
『航空機に乗り組んでその運航を行う者にあっては、航空身体検査証明を有する者でなければその行為を行なってはならない』
これは航空法を簡略化して写したものなんだけど、要するにパイロットは航空身体検査を受けてその証明を受けていなければフライトを行なってはならないという趣旨になる。
航空身体検査には第1種航空身体検査と第2種航空身体検査があって、旅客機のパイロットに必要とされるのは第1種の方で、第2種はプライベートのパイロットなんかに適用される。
当然、後ろに旅客を乗せることになる第1種航空身体検査の方がその基準が厳しくなっているわけだ。
つまり、君たちはこの比較的厳しい『第1種航空身体検査』に適合している必要がある。
航空身体検査の基準はしっかりと決まってあって、公開もされている。
まずはざっとでいいのでこれに目を通して欲しい。
これをざっと見ていくとわかるけど、検査項目として呼吸器系として喘息がどうとか、血液では貧血がどうとか、遠視力とか近視力の基準とかが書いてある。
不適合状態としてどういうケースはダメだけど、こういう場合には国土交通大臣の判定でOKになることもありますよってことまで明記してくれている。
また視力や聴力はもちろん心電図、血液検査や脳波検査まで、たくさんの項目があることが分かる。
これらの検査結果を見て、『航空身体検査指定医』という国土交通大臣の指定を受けた医師が航空身体検査証明を出すことができる。
それぞれの項目について、病院によって測定する機器が違ったりするんだけど、定められた基準に則って医師が判断するわけだ。
どういうところが引っかかりやすいのか気になると思うんだけど、ざっと思いつくものを列記してみるとこうなる。
①脳波 てんかんなど
②不整脈 ものによる
③血液検査 血圧やコレステロールとか、重度のアレルギーなど
④視力 色盲、色弱でひっかかる。(遠距離視力については昔に比べかなり緩くなった)
⑤各種病気
他にもいろんなケースで引っかかってしまうんだけど、生活習慣を見直すことで予防、改善できるものもあるし、脳波や視力など先天的なものとしてどうしようもないもの。また突発的な病気で一時的に資格が喪失するもの。血圧などで引っかかって、薬を飲み続けることを条件に合格となるものなど、本当にいろんなケースがある。
もし君が不安なところがあるのならば、まずは航空身体検査マニュアルを読んだ上で専門医やもし近くにいるならば航空身体検査の指定医に相談することをお勧めする。
ネットで調べていろんな情報が出てくるけど、個別の症状などは特殊性が強く、自分に当てはまるのか判断することは不可能だと思う。
さらにもう一つ、航空身体検査は基本的に現役のパイロットやパイロット訓練生が受けるもので、自社養成試験などの入社試験として行う航空身体検査とは少し違うと認識しておいた方がいい。前者は『航空身体検査証明の発行』を目的としたものであるのに対し、後者は『今後数十年にわたり航空身体検査に適合し続けらるか』を判断することを目的にしている。
つまり入社試験の身体検査に合格しても航空身体検査証明は得られない(会社にもよるかもしれないが)。
また当然、こちらの方が厳しい基準となっていて、基本的にはその会社の産業医と呼ばれる医師によって合否が判断される。
だから厳しいんだけど、『自分はここが悪いんだけど大丈夫だろうか』ということに対して、航空身体検査マニュアルで不適合と明記されていることであれば希望は薄いし、微妙なところであればその合否を判断するのは産業医なので、その人に聞くほか正解を得る術はないことになる。
また個人で航空身体検査の指定病院に行けば個人で(航空身体検査証明の発行目的じゃなくても)、航空身体検査の各検査を受けさせてもらえて、医師の所見を聞かせてもらえるのでパイロットになりたい人は一度受けてみることをお勧めする。そこで不適合な箇所があっても、改善の余地があるものであれば医師の指導の上合格する基準にまで持っていくことができるかもしれないしな。