これからのパイロットにはコミュニケーション能力が必要?

前にCRMについて記事にしたことがあるんだけど、これについてもうちょっと深く記事にしたいと思います。
CRMという概念

CRMの概要については上の記事をおさらいしてほしいんだけど、航空の大きな流れを説明します。

もともと飛行機っていうのはレシプロ機から始まったんだけど、レシプロ機っていうのはレシプロエンジンを搭載した飛行機のことで、ざっくり言うと車のエンジンと同じようなものを使って推力を作る飛行機のこと。

そこから技術が進化していって、1950年代にジェット機が現れた。
ジェット機っていうのはこれもそのまま、ジェットエンジンを搭載した飛行機のことで、これらの違いはまた別の記事で説明したいと思うけど、まあ革命的な技術だと言っていいと思います。

それで何が起こったかというと、それまで飛行機事故といえばエンジンの故障とか、飛行機の故障が原因で事故になっていたものが多かったのが、飛行機の故障による事故が圧倒的に減って、ヒューマンエラーが原因となる事故、つまりはパイロットのミスによる事故が割合として多くなってきた。

それでアメリカのデルタ航空と、テキサス大学とが協力して、コックピットのオブザーブをたくさん行って、何が原因でヒューマンエラーが起こっているのかの究明が行なわれて、その流れでCRM:Crew Resource ManagementやTEM:Thread and Error Managementというヒューマンエラーを減らすための方法論が発展してきた。

(追記:参考になる資料を教えてもらいました:最新の航空安全技法に学ぶリスクマネジメント

最近はさらに進んで、MCC:Multi Crew Cooperationという概念が主流になってきていてるんだけど、これら全てに言えるのは、機長と副操縦士で『これは危ないよね』とか、『ここがちょっと気になりますね』とかを言い合って、『じゃあこうやって対策していこうか』と、対抗策を用意してフライトに臨むこと。

これはそのまま危機管理に他ならないんだけど、口でいうほど簡単じゃないんだよね。

飛行機が遅れていて、話し合うための十分な時間がないかもしれないし、副操縦士が何かに気がついていたとしても、『これ言ったら機長に怒られたりしないかな?』とか思って躊躇して、言い出すタイミングを逃しちゃうことだってあるかもしれない。
怖い機長だってたくさんいるしね。

だからどんな状況でも、どんな人が相手でも的確にコミュニケーションをとるスキルっていうのが非常に重要になってくる。

みんながパイロットに対して抱いていたイメージとちょっと違うんじゃないかな?

昔のパイロットは有能な機長の指揮のもとで副操縦士が力を発揮するって構図になっていた。
そこで必要だったのは操縦の腕だとか、規定や力学をよく理解してフライトに生かせる知識とかだったりした。

でもそれが今後は機長と副操縦士、お互い独立した頭で危機管理を行って、的確にコミュニケーションを取ることでそれを実現させていく。そんな構図にパイロットの世界は変わりつつある。
そこに必要なのは、操縦の腕や知識の部分はもちろん、コミュニケーション能力も必要になっていくわけだ。

興味のある人はTEM、CRM、MCCについて調べてみてほしい。