ひやっとしたことについて質問です。
こんにちは。
以前僕が航空関係の取材について質問した際、ご丁寧な回答をしていただき、本当にありがとうございました!僕はLCCについて研究することにしたので日系LCC3社に電話をしてみたところ、全ての会社に断られたのですが(笑)、航空産業に詳しい大学教授に取材をすることができ、本日無事にレポートを書き終えることが出来ました!
前置きが長くなってすみません(-_-;)
最近僕は、元機長の方々のエッセイ集的なものを読むのにはまっているのですが、どの元機長さんも数回は「ひとつ間違ったら危なかった苦い経験」をしているようでした。管理者様も、そのような経験はありますか?
By okumaさん
回答
okumaさん、ご質問ありがとうございます。
そうでしたか、やはり相手が会社であれば個人相手に取材をすることは難しいのかもしれません。
何はともあれ、課題を終えられてよかったですね。
君の航空業界に対する理解も大きく深まったのではないかと思います。
さて、僕がひやっとした経験についてですが、ありがたいことにまだ「一歩間違っていたら危ない」という経験はしたことがありません。
まあ、失敗したことなら山ほどあるのですが。
でもまあせっかく質問してくれたのでもう少し続けましょう。
僕が基礎訓練の頃に教わったユニークな考えで、未だに心にとめていることがあります。
それは、「飛行機をエレガントに飛ばす」ということです。
なんのこっちゃと思うかもしれませんね。
しかし、事実優秀なパイロットのフライトほどエレガントになります。
エレガントにフライトを終えるためには、ルートのことや上空の風、自分と空港との距離関係、他機の状況と様々なことを考えておかなければなりません。
例えば、羽田から千歳に飛ぶとしましょう。
飛行機は高度3万フィート以上を飛びますが、この高度をいかに落とすかが難しい。
現代の飛行機はとても高性能に作られていて、例え全てのエンジンが故障してもグライダーのように滑空することができます。
だいたいどの旅客機も3°のパスで滑空することができます。
これは3万フィートを飛んでいた飛行機がエンジンがなくても地上に達するまでに約200kmも移動できるほどです。
しかし逆にパイロットが飛行機を速く降ろしたい時も、なかなか降りてくれません。
ここで千歳の話に戻しますが、千歳の滑走路の方角は知っているかな?
滑走路は01/19の方向で、ほぼ南北に伸びています。
Runway 19として使っていた場合(北から南に向かって着陸)、南から来る飛行機は空港をぐるっと回って北からアプローチすることになります。この場合は飛行機が多くの距離を飛ぶので、その分パイロットは降下できる時間が長く、ゆっくり降りていけます。
しかし、風が急に変わって、Runway 01(南から北に向かって着陸)に変わってしまったとしましょう。
すると、飛行機が飛ぶはずであった距離が極端に短くなり、飛行機はすぐそこに空港があるにもかかわらず高度が高すぎて、降りられないという事態に陥ります。
この場合には飛行機を急降下の姿勢にしたり、スピードブレーキをひいて降下率を稼ぎますが、これがエレガントではない。
まあ降りきれずにゴーアラウンドというのが最もばつが悪いのですが、急降下はお客さんにとっても不快な感覚になるし、極端な飛行形態です。
まあランウェイチェンジは不幸なものですが、管制官になかなか降下の許可をもらえず、最終的に飛行機が降りきれなくなるケースもあるし、またもともと予定していたルートから管制官のレーダーベクターにより近道をさせられることによって、飛行機が高くなってしまうこともあります。
優秀なパイロットであれば「ああこれは高くなるな。」と予想して管制官に早めに降下をリクエストしたり、スピードを絞って降下に備えることができます。
すると無理せず飛行機を降下させることができ、エレガントなフライトになります。パイロットの心理的にも「やばいおりられないかも」という心配がなく、とても気持ちがいい。
しかし何も考えていないパイロットは、空港にアプローチする直前で自分が高いことに気づいて、急降下しようとします。
これはまあ危ないとまでは言いませんが、格好よくない。
風が追い風であったりすると、飛行機はさらに高くなります。
プロのパイロットであればここまで読んでおかなければなりません。
なかなか難しい話だったかも知れませんが、パイロットが苦労することの一つです。
こんど飛行機に乗る時には、このフライトはエレガントなのかなとそんな目線でみてみて下さい。