効率的な頭は必要か。
はじめまして、初めて質問させて頂きます。
現在18歳で大学1年です。大学のある県の周辺の県から外に出ると、「そんな大学あったの?」というくらい名の知れていない大学に通っています。名前も知れてないくらいですからレベルはもちろん高いとは言えません。
このブログを読んだり、数社の採用のページで過去に採用されたり現役で活躍されている操縦士の方の話を見たりする限りでは「学歴はほとんど関係ない」と書かれており、実際に自分の通っている大学からこの5年のうち、片手で数えられるほどではありますが、大手にも採用されている先輩がいるようです。
自分は、国公立を受けるためのセンター試験で失敗をしてしまい今の大学に来ました。1度のテストだったとはいえ、自分にはそれだけ物事(情報処理的な意味での勉強)を処理する力がないんだと実感しました。
このブログで、日本でのTOP3に入るくらい頭の良い大学に入られたようですが、それでも入社後、大学受験よりも勉強しなければいけない訓練が待ち構えてると実感を踏まえて経験を書かれていますが、たかだか数教科のセンター試験さえも満足にこなせない自分に航空会社を、パイロットになりたい意志で受ける資格はあるのでしょうか?
どうしても、健康体であることや適性があることなど踏まえても、要領の良さだけはこの職業をやる上で完全でなければいけないと思いました。
今からこのようなことを考えるのは意味のないことかもしれませんが、やはりパイロットやその職業に就く訓練生という段階でも相当な要領の良さというものを要求されるのでしょうか。 By JUNさん
回答
JUNさん、ご質問ありがとうございます。ユニークでいい質問ですね、こういうのは大好きです。
結論から話しましょう。君はまだ大学1年生でしたね。君が現段階で要領がよくないとしても、そんなことは関係ないです。
確かに、要領の良さはパイロットになる上で大きな武器になるでしょうし、僕も以前の記事で「情報処理能力」について述べました。
しかし、僕が意図したのは、勉強ができないことを「頭が悪い」と短絡的に片付けてほしくないということであり、情報処理能力がなければパイロットになれないということでは決してありません。
効率で勝負できないなら、量(努力)で勝負すればいい。
実際、僕の知り合いのパイロットにも誰も知らない大学を出て、要領も悪い人はたくさんいます。
そんな人はどうしているか?
本当に、人より多く勉強しています。
それに、JUNさん、君はまだ大学1年生ということでしたね。そんなに若い君が、気にすることではない。
むしろ、そんなに若い段階から自分の弱点に気づいたことは、非常に大きな強みになるでしょう。
「効率的にやる」っていうのは、情報処理能力とは別の話で、能力ではなくテクニックの問題だと思います。
航空力学を例に考えてみると、すべての数式や飛行機の挙動(ストールなど)をすべて独立に覚えてしまうこともできるのでしょうが、それは効率的ではない。
<揚力の式:飛行機は何故飛ぶか?>があって、そこから様々な現象が起こる。
こういう捉え方をすると物事がずっとシンプルに捉えられます。
また航空法規(これは僕の最も嫌いな分野です)を勉強する上では、「パイロットが飛行中に持っていないとならないもの」とかを覚えなければいけない。
これはもう覚えるしかないが、自分で勝手に語呂合せを作って覚えてしまう。
こうやって、自分で工夫して効率を求めていくのです。
大学1年生からそうやって勉強してれば、君が2年後に就職活動をする時には他の人よりずっと効率的なテクニックを持っているでしょう。
また、僕が個人的に勧めるのは、やはり本を読むことです。どんな本でもいい。
知識を仕入れるという話は以前したと思いますが、もう一つ、大事なことがあります。
『言語処理能力』とでも呼びましょうか、大事なところを見抜く力、またアイデアを体系的に掴む力を養うためです。これについてもう少し述べます。
人はものを学ぶ時、また発信する時には必ずアイデア(感覚的なもの)を言語に置き換えることが必要になります。
でも感覚的にはわかることも、言葉として受け取ると理解するのが難しかったりする。
この感覚と言葉の両者を行き来する能力ってのは、大事なものだと思います。
ざっくりと言うと、本を読んでいて、『ひとつひとつの言葉の意味はわかるのに、全体として何も頭に入ってこない』なんて経験は誰もがしているでしょう。
これは、文字の羅列に過ぎないアイデアを体系的に掴めていない証拠です。また、体系的に掴むためには『どこが大事で、他のことがらはその大事なこととどう関係しているのか』を見抜かなければなりません。
これは訓練しないと身につかない。もっとも手っ取り早いのは、本を読むこと。
だから、僕は本を読むことを全面的に勧めます。さっきの言語処理能力に加えて、小説だったら自分の感性を刺激してくれるだろうし、理学書だったら知性が身につく。
回答は以上になります。自分の大学なんて気にしなくていいし、頭が悪いなんて心配する必要もない。
これから君がどうやっていくか。これに尽きます。頑張ってくれ。