フライトスクールへ行く前に
いつも楽しく拝見させていただいております。
私は自費にライセンス取得しエアラインパイロットになりたいと考えています。 フライトスクールへの入校は来年4月以降です。 そこで質問なのですが、入校までに勉強しておくといいことはありますでしょうか?
座学で苦労しそうな点、入校してからでは中々勉強できないプラスアルファの内容、etc… プロパイロットの方の視点でご教示願えますでしょうか。
ちなみに私は文系で現在、気象予報士とtoeicの勉強を進めております。 どうぞ宜しくお願いします。
BY Kさん
Kさん 、ご質問ありがとうございます。
ライセンス留学ですね、素晴らしいと思います。その決断をできる人はなかなかいない。是非頑張って下さい。
現在は気象と英語を勉強しているようですが、その目の付けどころは正しいと思います。ただ、少し気になるので注意をしておきます。
英語に関して言えば、TOEICもいいのですが、 目標とすべきは、アメリカ人の教官と英語でコミュニケーションをとってフライトする。ATCは100%確実に聴き取る。航空力学等、座学の内容を英語で聴き取って理解するということが目標となりますので、是非ともTOEICに限らず、上のことを念頭に置いて勉強して下さい。
”LIVE ATC”というWEBサイトで世界中のATCをリアルタイムで聴くことができるので、それも利用してみて下さい。
何度も言っていますが、ATCは守らないと命に関わります。
試験でも、ATC VIOLATIONは1発で不合格です。
次に気象予報士について。
気象の知識はATCや航空力学、航空法と並んで重要なものの一つです。しかも、天気を読むのは非常に難しい。
だから勉強しておいて損はない科目なのですが、気象予報士の目的は天気図から明日やあさっての天気を予測することですよね?
でも、パイロットが気象を勉強しなければならない理由は、『この天気が、今日のフライトにどう影響するか?』を測るためです。
例えば、君が訓練で考えなければならないのは、『今日は3000ftくらいに雲が広がりそうで、午後からは気温の上昇とともに雲の高さもあがりそうだな。今日の科目はエアワークで、すべての科目が3000ft以下の高度でできるから問題ないな。最悪でも先に高度の低い科目を先にやっとけば、時間帯の経過と共に雲は上がってくるはずだ。』
と、教官にブリーフィングしなければならないのです。
もっとクリティカルな例では、前線が近づいてきている時に飛ぶかフライトをキャンセルするかを自分で決めなければならない。
なんとなくではダメだ、君の気象の知識に基づいて論理的に説明できなきゃいけない。
とは言ってみたものの、それは飛んでみないとわからないことでもあります。従って、気象の基本的な知識や天気図の読み方を勉強するという意味で、気象はいまから勉強しておいた方がいいでしょう。
ここから僕が個人的に勉強してほしいことを紹介します。まずは物理。
このサイトの<パイロットの教える航空宇宙工学>でも紹介していますが、飛行機というものは物理に基づいて飛ばします。
訓練中よく言われたものですが、アマチュアのパイロットは感覚的に飛ばしてうまけりゃそれはそれでいい。
でも、プロのパイロットはそれではいけない。理論的に飛行機を飛ばして、何度やっても、どんな悪条件でも80点をとれなきゃプロじゃない。
そんなことを口をすっぱくして言われました。一つ本を紹介しておきましょう。
本気の物理の本ではないのですが、世界的に有名なパイロット教育の本です。
たくさんあって申し訳ないのですが 最後にもう一つ。
レシプロエンジンについてマニアックなまでに詳しくなっておくといいでしょう。
事業用操縦士の資格を目指して訓練をすることと思いますが、その審査要項の中に、『飛行機に関する知識』というものがあります。試験に使う飛行機について根掘り葉掘り聞かれます。エンジンから、その飛行機についているアンテナの位置と目的とか、飛行機にあいてる小さい穴を指差して『これは何?』とか聞かれます。もちろん審査要項はそれだけではなくて、重要なものでは緊急時の操作とかもあるのですが、これは実際に飛行機を見て勉強した方がずっとわかり易い。
でも、エンジンについては日本でも勉強できる上に、とても奥が深い。エンジンの部品すべての名前と役割を言えるようになるくらいの心つもりで勉強していいと思います。
さて、勉強というと熱くなってたくさん書いてしまいましたが、固くならずに、できることからやってみて下さい。応援しています。