パイロットの方から見た最新飛行機

こんにちは。パイロットの方とブログを通してコミュニケーションが取れうれしく感じております。
僕ですが、シアトルにある某、旅客機のエンジニア(電気関係)をしておりました(パーツメーカーですが…。)。
最近の旅客機はハイテク、といった言葉がよく見られますがパイロットの方から見てどうでしょうか?例えば車、電車のスピードメーター、ハイテク(?)っぽくデジタル表示していたりするものありますが、日が強いとよく見えない…一方で従来のアナログメーターは視認性が良いような気がします。
航空機もグラスコックピット(液晶画面に情報が表示されます)などハイテクを歌っておりますが、例えば故障した時など不安に思われることはないですか?僕としては最低限必要な情報(対空速度、エンジン状態、燃料、高度…)などはアナログ表示のほうがいいと思いますが…。
すみません若造で知ったかぶりかもしれませんが、普段感じている航空機に対する要望?みたいなものをご教示ください。
回答
ご質問ありがとうございます。
返事が遅くなってしまって申し訳ないですが、このような形でエンジニアの方とコミュニケーションを取れて僕も本当に嬉しいです。
さて、旅客機のハイテク化ついて。さすがはエンジニアをしておられる方で、いろんな見方がある難しい質問ですね。
グラスコックピット等、計器のハイテク化もさることながら、飛行機のナビゲーションシステムまで今の飛行機はコンピューターにより自動化されています。
パイロット仲間でも、MD機(まあ機体によっては古いものが多いです)に乗っていた方が最新のボーイング機(エアバスはさらにハイテク化されていますが)に以降して『この飛行機はほんとすごいな!ボタン押すだけで飛んで行くよ!』なんて言っているのを聞いたことがあります。
さて、ここからはあくまで僕独自の意見です。
僕なんて若輩者で、若造の戯言に過ぎないと思いますが、僕の思うところを僕の目線で述べてみます。注意して欲しいのですが、別に誰を批判しているわけでもありませんよ。
飛行機のハイテク化は様々な理由で行われてきたのだと思います。
飛行機というものは、晴れている日であれば、計器やオートパイロットなどなくても出発地から目的地まで安全に飛ばすことができます。そして、それこそがパイロットにとっては最も面白いフライトであると思います。
パイロットであれば皆小型機で基礎訓練を受けますが、そこでは自分で自由に航路を決め、高度を決め、雲があれば目視でさけて、近くに飛行機がいれば無線で交信して位置を知らせ合います。
気分が乗れば地上500ftまで降下して、遊覧飛行気分に浸ることもできました。
また一昔前は、長距離路線では機長、副操縦士の他に航空士<参照>という人もコックピットに乗っていたし、かのジャンボジェットでは航空機関士という人もいて、コックピット内の仕事を分担していました。
それが現在では飛行機のハイテク化によって、コックピット内の仕事は2人でこなせるようになり、FMS(Flight Management System )と呼ばれる装置にルートを入力するだけで飛行機はその通りに自動で飛んでいけるようになりました。
さらにILS(Instrument Landing System)と呼ばれる地上、機上の装置を使うことによって、着陸までも全て自動でできるようになりました。
これらの進化は、ざっくり言ってしまうと、次の3つの理由で行われてきたと言えると思います。
パイロットの仕事量の軽減、安全のため、そして利便性ためです。
オートパイロットによりパイロットの仕事量はグンと減ったと思います。
またTCASと呼ばれる装置は他の航空機と衝突しそうになると警報と『上昇(下降)せよ』という指示を出してくれますが、これにより安全性も上がったと言えます。
またILS等により、以前は天気が悪い時は降りれなかった空港に降りれるようになり、空の利便性が増しました。
また、質問者さんのご指摘のグラスコックピットですが、これは飛行機のハイテク化の中でパイロットがモニターしなければならない計器が増え、もっと効率的に基本計器を見れるようにと作り出されたものだと思います。人間工学にも基づいて、人が認知しやすいように配置されてもいて、便利なものだと思います。
アナログとデジタルの好みについて言えば様々な意見があると思いますが、視認性は問題はありません。ただ、アナログ計器からデジタル計器に移る時は慣れが必要になるかとは思います。
故障についてですが、デジタル表示になっていても、高度の感知などアナログ計器と同じものが採用されているし、冗長性(壊れてもバックアップがある)も確保されているので、そこでもデジタルだから悪いということはないと思います。
じゃあパイロットからみてどれがいいんだ?という話ですが、飛行機を飛ばす面白さを追求するならば、質問者さんのおっしゃるアナログ計器の十字配列が一番ですね。
でも今の飛行機のハイテク化の中ではそんなことも言ってられず、僕が思うのはスイッチ等の使い易さ。人間のミスをしないような設計を追求することでしょうか?
例えば、私の飛行機では頭上にあるエンジンの始動スイッチと、その近くにあるワイパーのスイッチが同じ形をしています。
キャプテンにエンジンをかけてと言われて、スイッチを間違えてワイパーがウィーンなんて気まずい思いをしたって話を聞いたことがあります。
また、なんとかならないかなと思うのが(実際起こったことがある事例です)、飛行機は飛ぶ前にはギアをロックするピンがギアのある場所に刺さっています。これを抜き忘れて飛んでしまうと、上空にあがってもギアが上がらず、エアターンバック(出発地に戻る)することになります。
もちろん、忘れるてはいけないことなのですが、人間である以上ミスは起こり得る。そのミスを許容するようなシステムであったり、プロシージャを設計しなければならないと思います。
長くなりました。質問者さんの趣旨からかなりずれてしまった感もありますが、是非またコメントして下さい。交流しましょう。