原油高と円安による航空業界への影響について

最近はコロナとウクライナの話題で持ちきりだけど、原油高と円安について考えてみようと思う。

こういうのって意識していないと実感が湧かないんだよね。飛行機って燃料を大量に使って空を飛ぶわけだから、原油の値段が結構きいてくる。

じゃあ今の原油高でどれくらい運航コストが上がっているのか考察したいんだけど、計算してみて色々面白いことに気づいたので参考にして欲しいと思う。

普段から車をよく使う人がガソリン価格に敏感になるのと同じ話なんだけど、まずは原油価格が今どうなってるのかみてみよう。

出典:世界経済のネタ帳

もう一目瞭然なんだけど、びっくりするくらい上がってる。
原油価格ってコロナが問題になってきてきた2020年の5月くらいにはめちゃくちゃ安かった。
20ドル/バレル を切ってたんだ。

それが今は100ドル/ バレル以上という、5倍以上の値段になってしまっていることがわかる。

まあこの20ドルっていうのは異常な値だったんだけど、僕の中のイメージでは『40ドル/ バレルくらいが普通じゃない?』という感覚がある。
つまり、現在はその2.5倍もの値段になっていて、飛行機を飛ばすのに必要な燃料代もおおよそそれくらい高くなってしまっているということになる。

次に円安について可視化してみよう。

出典:世界経済のネタ帳

これも異常だよね。

こっちの方がみんな馴染みがあると思うけど、1ドル110円前後くらいってイメージを持ってる人が多いんじゃないかな?
このチャートにはまだ出てないけど、2022/5/9日現在で約131円という数字になっている。

航空会社っていうのは製造業と違って輸入とか輸出とかの話はないんだけど、飛行機のリースはドル建になっていたりするので円安は痛い。

また燃料は円でもって買うわけだから、原油が高くなった分と、ドル建てになっている原油を買うために円安になるとさらに高くなるという点で、ダブルパンチを喰らうことになる。

ざっくりと平時からのコスト増しを計算してみよう。

平時の原油価格/円を
40ドル/バレル 110円 / ドルとすると、 1バレル4400円ということになる。

それに対して今の原油の値段を
100ドル/ バレル 130円/ドルとすると、1バレル13000円となる。

え、3倍じゃん…って思うよね。

これを普段フライトで使う燃料で考えてみようと思う。
羽田 – 沖縄線で使用する燃料が機種や季節によっても大きく違うのでかなりざっくりになるんだけど、えいやと12,000lbsとしてみよう。

この12,000lbsが一体いくらなの?という話なんだけど、結構計算がめんどくさい。体積から燃料の比重を考慮して重さに換算して単位を揃えてやる必要がある。

まず上で算出した平時の値段だと、
1バレル = 159L = 4400円
つまり1L = 27.7円 となる。

燃料の比重はこれも航空燃料でも色々あるんだけど、0.8kg/lとする。すると
1L = 0.8kg = 1.76lbs
1lbs = 0.57L = 15.7 円

計算結果では、1ポンド16円くらいとなった。
僕はもともと『1ポンド40円くらいじゃないの?』という感覚があったので何回も計算し直してみたけれど、税金を考慮するのを忘れていたみたいだった。

燃料にかかる税金には関税、石油税、消費税、航空機燃料税とか色々あってよく話からなったんだけど、とあるWEBサイトでおよそ1L当たり50円くらいと出てきたので、これを使わせてもらうことにする。

すると 1lbs = 50円 × 0.57L = 28.5円 が上に加算されて、
1lbs = 15.7円(燃料本来の価格) + 28.5円(税金) = 約44円 となった。

これで僕の感覚に近い値段になった。この値段を元に羽田沖縄に必要な燃料 12000lbs がいくらになるのか計算すると、
12,000lbs × 44円 = 約53万円 となる。

どうだろう?『たっかいなぁ』と僕には思えるんだけど、この半分以上が税金なんだからぼったくりもいいとこだよね。

以上までは『平時の価格』
次に今の原油の値段、1バレル13000円で同じ計算をすると、

1バレル = 159L = 13000円
→1L = 81.8円
1L = 0.8kg = 1.76lbs
→1lbs = 0.57L = 46.6円 が燃料本来の値段になり、これに税金28.5円/lbsをたすと、
1lbs = 約75円になる。

原油価格と円安ではあるけど、燃料のほとんどが税金であるために皮肉にもコスト増しとしては2倍弱という数字になった。

これもさっきのように羽田 – 沖縄路線 12,000lbsに当てはめてみると、燃料代で90万円となった。
平時に比べて2倍弱、37万円のコスト増しになる。

このコストがどれくらいの影響かというと、羽田 – 沖縄線のチケット代が平均25,000円くらいだと仮定すると、約15人のお客さんがいつもより多く乗ってくれないと元が取れないことになる。

B737だと搭乗率が1割増えないとコスト増しをカバーできない。
これを多いとみるかどうかは人によって変わると思うけど、コロナ禍から完全に回復できてない中では苦しいと思う。

と、ここまでだらだらと計算を続けてきたんだけど、実はまだそんなに絶望的ではない。
というのも、航空会社は燃料のヘッジをかけていて、燃料代が高騰してもしばらくは同じ値段で燃料を使うことができる。原油価格が下がっていく局面では無駄にコストを払うことになるんだけど、今のような状況ではかなりでかいと思う。

ヘッジの掛け方は航空会社によっても違うだろうけど、半年から1年くらいなのかな?そのあとは値段が上がってしまうことになるので、この原油高、円安がどれくらい続くのかは航空会社にとっては死活問題になると思う。

あと、これも幸か不幸か、今はコロナ禍にあって航空機燃料税が半額くらいに減税されている。これも燃料代高騰の影響を小さくしてくれていて、総合すると実際には上で計算した事態になるのは燃料のヘッジが終わって、また減税処置が終わってからになる。