パイロットの職業病について質問です。

いつも楽しく拝見させていて頂いています。
質問の欄では身体検査に関する質問が多いように感じます。
そこで、ひとつ疑問に思ったのがパイロットの職業病です。
 思い当たるのが、私たち乗客がなることがある航空性中耳炎です。
パイロットの方は大丈夫なのでしょうか?
また、もし航空性中耳炎になっても身体検査に適合するのでしょうか?
 そのほかにも何か職業病があれば教えていただきたいです。
パイロットという秘密が多い職業ですか、このサイトを通して色々なことを知ることができパイロットへの関心が高まりました。これからも更新を楽しみにしております。
by Takaさん
回答
Takaさん、ご質問ありがとうございます。
鋭い洞察ですね。その通り、パイロットという職業に対してここ日本では情報が少なすぎると思います。そのせいか、パイロットとはどこか選ばれた人しかなれないような雰囲気が漂っているように思えますが、本当はそんなことはありません。
ちゃんとした適性を持って、ちゃんとした訓練をすれば誰にでもパイロットになれます。
それをもっと知ってほしくてこのWebサイトを開設している次第です。(もちろん、甘い世界ではありませんよ)
さて、航空性中耳炎について。聞いたことがある人も多いでしょう、パイロットは普段からフライトをしていて航空性中耳炎にならないのか?またなってしまってら航空身体検査に通らないのか?
まずは航空性中耳炎になってしまう原理について説明しましょう。
地球上では気圧というものがあります。(地上では1気圧といいます)これは文字通り、『空気の圧力』のことで、わかり易く言えば空気にも重さがあって、その重さを人間は普通にありすぎて意識していないのですが、耳にもこの重さがかかっています。
飛行機に乗って上空に上がれば、気圧は低くなります。(適当に、0.5気圧になるとしましょう)上空へ行くほど自分の上に乗っかっている空気は少なくなるので、空気の重さは小さくなるわけです。
軽くなればいいようにも思えるのですが、人体にはたまに悪影響を及びします。
地上では耳の鼓膜の中も1気圧になっていますが、上空に行くと耳の中の圧力が外の気圧にあわせて空気が抜けていきます。解りにくいのでもうちょっと見やすくしてみましょう。
地上: 外気 1気圧 耳の中 1気圧
(上昇)
上空: 外気 0.5気圧 耳の中 1気圧
と、こういうことになると仮定してみましょう。何が起こるでしょうか?
耳の中の方が圧力が高いので、空気は圧力の低い外気に向かってでていこうとします。
その結果耳の中から空気が抜けて耳の中の圧力が下がります。
上空: 外気 0.5気圧 耳の中 0.5気圧
という理想的な状態になるわけです。
そして飛行機が降下する時にはこの逆の現象が起こります。
上空: 外気 0.5気圧 耳の中 0.5気圧
(降下)
地上: 外気 1気圧 耳の中 0.5気圧
どうなるかわかりますね?外から圧力の低い耳の中に向かって空気が入ってこようとします。その結果、
上空: 外気 1気圧 耳の中 1気圧
と、もとの人間が普通に生活している状態に戻るわけです。健康な場合は。
実は、耳というのは構造的に空気は抜け易いけど、入ってきにくいのです。
つまり、
上空: 外気 1気圧 耳の中 0.5気圧
という状態から、耳に空気が入ってこないで、その結果耳に違和感を感じたり、痛みを感じることになります。
よくわからなかったかな?僕よりもうまく説明しているWebサイトはたくさんあるのでそちらも参照してみて下さい。(そもそも僕の説明も間違っているかも)
やっと本題です。実は、パイロットもこの航空性中耳炎になることはあります。
パイロットといえども生身の人間なんだから生理的な現象には逆らえないわけですね。
花粉症で鼻がじゅるじゅるしてる時なんかには航空性中耳炎になりやすいです。また病み上がりにフライトして航空性中耳炎になったという話もしょっちゅう聞きます。
面白いことに、出雲空港なんかで航空性中耳炎になりやすいという噂を聞いたこともあります。アプローチ方式が急な降下を要求しているので航空性中耳炎になりやすいという最もらしい説明がされていますが、真偽のほどは定かではありません。
ちなみに、僕はなったことがありません。
体だけは丈夫なようです。
また航空性中耳炎になると航空身体検査に不適合となります。
従って、なってしまった場合にはしばらくフライトができなくなります。
っていうと怖いですが、会社もこの航空性中耳炎には寛容なようで(職業病なんだから当たり前ですが)、回りからも「あーやっちゃったかぁ」なんて言われて、数日間休んで乗務に戻ります。仕事を堂々と休めるので航空性中耳炎になったことを喜んでしまう人もいます。
ただ、航空性中耳炎はくせになると言われていて、そういう意味では非常に嫌なものです。(いや、どういう意味でもいやなものですね)