ブリーフィングの辛さってなんですか?

こんばんは。1つ質問がありました。
パイロットってどんな仕事なのか? の項に、「Briefing」と聞くと、パイロットなら誰しも苦い顔をする、とお書きになられていますが、何がここでいう「苦い顔=辛さ」なのでしょうか?
自分とパイロットでは考えも知識も当然違いますが、今日必要なことを取りまとめてこれから飛ぶぞ!という気持ちにさせてくれそうなブリーフィングはむしろ好ましいものとさえ思います。
何が発生しても、人の命を救う最善策を立てるための準備が求められるという点で大変なのでしょうか。実際ラインの運航では、誰しもが(運航上の一部に過ぎませんが)「クリティカル11ミニッツ」に起こるであろう想像される全てのことについてイメージしながら日々の運航に努めておられるのでしょうか?
お時間があれば教えてください。よろしくお願いします。
By junさん
回答
junさん、ご質問ありがとうございます。
いつもこのブログを読んでもらっているようで、嬉しく思います。
ちょっと誤解を与える表現だったのかもしれませんね、junさんの考えることは至極正しいことだと思います。
僕が苦い顔と書いたのは、副操縦士にとって大変なことだからです。
ブリーフィングというのはとても奥が深くて、『これとこれとこれをやればいい』と、そういったものではありません。
天気など、人によって目をつけるポイントも違うし、いいパイロットであればほど『スレッド』といって、今日のフライトで脅威となりそうなものを見つけ出し機長と共有します。
訓練時代からこのブリーフィングの練習をみっちりとさせられますが、気象の知識や空域や空港の情報、風の影響など、真剣に考えだすときりがありません。
そして、当日は自分よりも一層の知識を持った機長にそれを披露するわけです。途中でつっこまれやしないかとドキドキするし、チェックの時なんかはピリピリもします。
という背景があって苦い顔という表現をした次第です。
もちろん、これから飛ぶぞ!という思いでブリーフィングが楽しいと感じる人もいるとは思いますが、大多数はどうなんだろう。。
まあその実、慣れてしまえばなんてことはないとも言えます。
気心のしれているキャプテンを飛ぶ時なんかはなおさらです。
クリティカル11ミニッツ。
詳しいですね。これは離陸後の3分と着陸前の8分の事故が集中している時間帯を差しますが、事実、この間が非常にパイロットが集中力を必要とされる時間帯です。
飛行場の周辺にいることで他機もたくさんいるし、ATCからの指示も頻繁にきます。
着陸前などはアプローチのためのチェックリストもやらなきゃいけないし、天気が悪い日なんかは常に緊張していなければなりません。
エンルート(航空路)を飛んでいる間は背の高い積乱雲などを除いて天候からの影響というのは比較的少ない。
だからjunさんの言うように、地上で予見できることはイメージしています。
例えば、前線が着陸予定時刻前後に空港を通り過ぎることが考える場合、風向きの変化によってランウェイ・チェンジ(使用する滑走路が変わること)の可能性があります。
混んでいる空港では特にこのランウェイ・チェンジによるスレッドが大きくなります。
だから飛行前のブリーフィングや上空でのブリーフィングでランウェイ・チェンジの可能性、そうなった時の飛行経路などを確認します。
その予想が当たったときなんかは大きな充実感を感じる瞬間でもあります。
本当にいい質問だと思います。
書き始めるとあれもこれも言いたくなってしまいました。
パイロットというのは毎日決められたルートを飛ぶ変化のない仕事だと言われたりもしますが、自然や他の様々な要因を予測し避けなければならないとてもダイナミックな仕事です。
他にも君の知らない面白い側面があると思うので、なんでも質問して下さい。