ストールの恐ろしさ
前回の続きだ。ストールが起こってしまうとどんなことが起こってしまうのか。これを知らないパイロットはいない。
まず結論から言おう。ストールすると、機体はコントロールを失う。
前回ので分かったと思うが、揚力も失う。
揚力とコントロールと同時に失った機体がどうなるかわかるよな? 墜落する。
だからパイロットの訓練では、どうやってストールから機体を回復させるか、無意識に体が動くまでに訓練させられる。だから乗客は安心して飛行機に乗れるわけだ。
でもストールの回復の操作については後で述べるとして、今日はストールについて空力的な観点から説明する。これが理解できれば何故コントロールを失うのか解るだろう。
まず、下の図を見てほしい。最近は図をまじめに作ってるから見やすいと思う。
知らなかった人も多いと思うが、飛行機の翼の断面ってのはこんな形をしてる。翼を上からズバっと切ったら断面はこんな形になっていると思ってほしい。
主翼が揚力を作っていることはもう知ってるよな?
でもそれには条件がある。
それは、『空気が翼に沿ってキレイに流れる』ことが条件となる。
次の図を見ればわかるだろう。
少し翼の迎え角を上げた図だ。
何が起こってるかわかるかな?
流れが、翼から少しずつ『はがれて』いる。
そしてはがれた後は、渦を巻いている。
なんでそうなるのかは流体力学っていう難しい学問を勉強しないといけない。実は流体系は僕も苦手だ。
もんのすごい方程式を解かないといけない。
だからここでは図で感覚的にわかってくれればいい。熱意のある人は流体力学の本に挑戦してもいいだろう。
もっと迎え角を上げていくと
こうなる。もう翼の始めで流れがはがれてしまっているため、揚力が出せなくなってしまう。
この流れが翼からはがれてしまう現象を、『剥離(はくり)』という。
ここで思い出してほしい。エルロンってどこについてるんだっけ?
翼の後縁だったよな?
こんな風に、空気の流れが翼に沿ってキレイに流れてくれないために、エルロンにちゃんと空気の流れが当たらず、エルロンが動いてもコントロールが利かないってわけだ。
失速ってものがどんなものなのかわかったかな?
次回はお待ちかねのストールからの回復操作について話そう。