ターンの操作
ここまで読んできてくれてありがとう。とりあえず、この一連のパイロットの操作を工学的に説明してきた集大成だ。
この回を理解できれば、飛行機の運動の本質を理解したと言える。
別の回で着陸なんかも説明したいが、ここまでの話で全て説明できる。
じゃあ始めようか。
まずは予想してみてくれ。
針路を90°右に旋回したい。コントロールに対してどういうインプットをすればいいかな?
深く考えなくていい。操縦桿を右にきればいいんだよな。
すると、エルロンが動いて飛行機がローリングする。
すると、飛行機がターンしだす。
揚力の矢印が傾いたことによって、ターンする方向への力が生まれるんだ。
ここで、2つのことに注意してほしい。
ひとつ目は、揚力の軸が傾くから、飛行機を支えられなくなる。
上の図をもう一度見てくれ。
このままだと飛行機は降下していっちゃうんだ。
だから、操縦桿を少しひいて、落ちないように支えてやる。
操縦桿をひくとエレベーターがあがって、揚力係数が増えて揚力が増えるんだったよな?
揚力の式 L = 1/2 ρ V2 S CL
これで飛行機を支えられる。
でも、エレベーターをひくと実は抵抗力が増える。抗力の式もあるんだ。揚力の式とほとんど同じだから安心してくれ。
抗力の式 D = 1/2 ρ V2 S CL
エレベーターが上がるとこの抗力係数が増えるので、抗力が増える。
まあ感覚的に言うとエレベーターが空気の流れを遮るんだから抵抗になると思えばいい。
抗力が増えると飛行機はどうなるかな?普段は抗力はエンジンからの推力と釣り合ってる。
抗力が推力より大きくなると飛行機は減速しちゃうんだ。だから、増えた抗力に対抗するために推力を増やす。
つまり、エンジンのパワーをあげてやるわけだ。
今まででパイロットが何を触ったかわかるかな?
左手で操縦桿を右にきって、支えるために少しひいた。
さらに右手はエンジンのパワーを調整するスロットルレバーを前に動かした。
申し訳ない。さっき気をつけてほしいことが2つあるって言ったよな?
実は、エルロンを動かしただけだと飛行機は滑ってるんだ。
このままだと、飛行機はこんな風に飛んでる。
滑ってると飛行効率がよくないから、ターンの方向に機軸を合わしてやる。
つまり、ラダーをふむんだ。右のラダーをふむと飛行機はこんなふうに動く。
これで、美しい釣り合い旋回ができるわけだ。
パイロットが何を触ったか覚えてるかな?左手で操縦桿、右手でスロットルレバー、右足でラダーペダルを踏むんだ。
もちろん操縦桿をひきすぎると揚力が増えすぎて高度があがっちゃうし、パワーを足しすぎると速度が増えちゃう。
高度を変えずに、速度を変えずに、バンク角を一定に、ラダーの量を適切に、針路を変えすぎないように適切なタイミングで操縦桿をもとに戻すんだ。
これで90°ターンができる。
難しそうだろ?
難しい。確かに難しいんだが。訓練して、みんなできるようになる。
でも、最高に面白い乗り物だよ。