エネルギー保存則が飛行機の操縦に絡む。

2011-03-30

当たり前なんだが、本当に飛行機の操縦って物理法則に従ってるんだなって思えることがある。

まずはニュートン大先生の古典力学の続きだ。

エネルギー保存則 理系の学生なら知ってると思うが、改めて説明しよう。
前回のレッスンで運動エネルギーと位置エネルギーについては理解できたよな?
ここからが面白い。

エネルギー保存についてwikipediaでは『ある閉じた系の中のエネルギーの総量は変化しない』と言っている。

これを飛行機について考えてみよう。

『ある閉じた系』とは飛行機のことだ。

『エネルギーの総量』は運動エネルギーと位置エネルギーの合計だ。

じゃあ置き換えて読んでみよう。『飛行機の運動エネルギーと位置エネルギーの合計は変化しない』って読めるよな?

まだ難しいな。もうちょっと噛み砕いてみよう。

運動エネルギーって『スピード』に関するものだったよな?

そんで位置エネルギーは『高さ』に関するものだ。

かなり乱暴だがこれもおきかえちゃおう。

『飛行機のスピードと高度の合計は変化しない』
どうだ?なんとなく見えてきたか?

スピード + 高度 = 100 (←この100は変化しない)

としてみよう。そんでもってスピードが50で高度も50にしよう。合計は100。
もしスピードを上げてみたとする。適当にスピードを80にしてみよう。すると高度はどうなる?

高度は20になっちゃうよな?合計は100じゃないといけないんだから。スピードを上げると高度は減るわけだ。

じゃあ次は高度を上げてみたとする。高度を70にしてみよう。するとスピードは30になる。

やっぱりここでも高度を上げるとスピードはへっちゃう。

つまり、『スピードを高度に変換する』わけだ。

これはエネルギー保存則。とてつもなく乱暴な議論だけど。専門家が読んだら激怒するかもしれない。でもイメージは伝わったかな?

まあここまでが物理のお勉強。こっからが面白いよ。

エレベータの働きで説明したことを思いだしてほしい。

操縦桿をひくと飛行機の頭が上がって上昇するんだったよな?
でも、上のエネルギー保存則から、高度が上がると速度が減る。

逆に操縦桿を押して高度をさげると速度が増えるんだ。ジェットコースターと同じだな。
ここで思いだしてほしいのが揚力の式だ。

 L = 1/2 ρ V2 S CL

高度が上がるとエネルギー保存から速度が減る。速度(上の式におけるV)が減ると、上の式を見てくれ。…揚力が減るんだ。

揚力が減ると飛行機が落ちちゃうからさらに操縦桿を引いて迎え角を上げる。
さらに高度が上がり続けると速度が落ちて…

それを繰り返していくとどんどん迎え角が上がり続ける。
するとどうなるか?

勘のいい人はわかるだろう。ストールするんだ。
実際、訓練ではこの原理でストールに入れる。

『え!?じゃあ飛行機上昇できないじゃないですか!??』

って思ったかな?

でも、忘れちゃいけないのが、これはパワーを一定にするという前提のもとの話なんだ。
上昇する時は必ずパワーを足す。

パワーを足すってのはつまりエネルギーを足してやるってことなんだ。物理的にどういう意味があるのかというと、さっきの

速度 + 高度 = 100

この100のところにエネルギーを足していくわけだ。例えば速度50で高度50の状態から上昇したいとしよう。

50分のパワーを足してやれば、高度を100まであげたとしても、速度50と速度を減らさずに上昇することができる。

この考え方に基づいて飛行機は操縦されるんだ。つまり完全にニュートン先生の指導のもとに飛行機は飛ばされる。