パイロットの仕事に飽きる方はいますか?
いつも楽しく読ませていただいています。
パイロットを目指す中で、疑問が湧いたので良ければお願いいたします。
パイロットの仕事は、基本的には操縦と訓練の繰り返しだと思いますが、中にはその繰り返しに飽きる方はいないのでしょうか。
飛ぶ魅力は飛んだ人にしか分からないと思いますが、それプラスで何か飽きない理由みたいなのがあれば教えていただきたいです。
逆に、どんな人は飽きる傾向にあるなどもあれば教えていただきたいです。
少しネガティヴな質問になってしまいましたが、よろしくお願いいたします。
By けんさん
回答
けんさん、ご質問ありがとうございます。
ネガティブな質問でも全然構いません。むしろなかなか口には出せないけど、そう思っている人は少なくないと思います。
まず僕の経験から言うと、パイロットの仕事に飽きた、という人は見たことがありません。
確かにこの仕事は操縦と訓練の繰り返しなのですが、操縦は腕というより、ヘッドワークがメインです。
また毎回同じフライトになるということはあり得ません。
「今日はいい天気で楽だな」って日はありますが、春夏秋冬で日本の天気は大きく違うし、例えば今の冬の天候でも、雪が降るとCold Weather Operationという特殊な運航になるし、滑走路が滑りやすくなっていて危険です。晴れた日でも、冬は強いJET気流が日本列島上空に出てくるので、特に西に向かって飛ぶ際にはそのジェットによる揺れ、また対地速度が少なくなるので、なんとか定刻で到着できるように工夫しなければなりません。他にも、冬の日本海側の雪雲なんかは夏の積乱雲と違って小さな積雲からでも避雷することがあります。
気象以外にも最近はLCCや外国からの飛行機が日本全国にたくさん飛んできていて、主要空港ではめちゃくちゃ混みます。目的地直前で急に管制官から「どこどこでホールドしなさい」なんて言われるのは珍しくありません。すると、燃料が足りるのか気になりますね。
飛行機の運航にはそのように無数のファクターがあって、それが絡みあいます。そんな中でパイロットは状況認識を働かせて、うまくジャッジメントを行います。
それがうまく行かないと後で慌てることになるし、うまくいくと自己満足に浸れます。残念ながら、褒めてくれる人はいません。お客さんにとって安全に、時間通りに目的地につくことは当然ですからね。
運航について深く考えられていなくて、単純に操縦桿を動かして喜んでいる人は飽きてしまうかもしれません。でもプロのパイロットでそんな人はいないと思います。
しかし、仕事の性質上、この仕事にはないものがあります。
それは新たな技術を開発するとか、世界にイノベーションを起こすとかそう言ったものです。
パイロットの仕事は基本的には運航という与えられたミッションを確実に遂行するというものです。iPhoneみたいにみんながびっくりするような製品を作ることもないし、Googleみたいにぶっ飛んで優秀な人が、魔法みたいなサービスを作ることもありません。
まあ僕は幸いにもそんな頭脳はなかったので問題ないですが、そんな人には不満のある仕事だと思います。
以上、参考にしてくれればと思います。