ユーモアを身につけろ
どんな時でも冗談のひとつでも吐ける人はかっこいい。
でもなんでパイロットにユーモアが必要なのか?
それは、余裕のある人にみえるからだ。パイロットに限った話じゃないな。
例えば、気になる採用面接。
めちゃくちゃ緊張するよな?僕も緊張はするほうだ。
でも、そんなめちゃくちゃ緊張する場所でユーモアを利かせられるとポイントが高い。
それに、ユーモアって要は機転なんだ。
状況をうまくつかんで、回りの人の心に一足飛びで入り込める。
僕は別にユーモアなんか利くような人間じゃないんだけど、採用面接の時にまぐれでうまくいったことがある。
会社の社長も同席した最終面接での話だ。
僕は当時、航空宇宙工学の大学院に在籍していたんだけど、そこで嫌な質問がきた。
「君はパイロットにならない方が幸せなんじゃない?せっかく大学院まで行ってるんだから、飛行機メーカーとかに行った方がもっと楽しいよ。」
もはや質問ですらない。なんて答えればいいんだろう?
ちょっと考えてみてほしい。
その時に僕が言った答えは、「いやぁ、それ先生にも言われるんですよ。」
「昨日なんか明日パイロットの最終面接だと言ったら、『君は科学技術の発展に貢献しないんだな』なんていやみを言われました。」って言ってみた。
冗談が通じるのか一瞬不安になったんだけど、思いの他大爆笑してくれた。
全く回答にもなってないんだけど、これでいいんだよ。
現に受かったんだから。まあ、これが受かった決めてになったわけではないと思うが。
別に面接官は君の答えを聞いて、その答えが正しいかどうかで採用を決めるわけではない。
それよりも、話してる時の雰囲気だとか、話し方、声のでかさ、ちゃんと人の顔見て話してるのかなんてことの方が気になる。
真面目な面接官はちゃんと聞いてるかもしれないけど、みんなそんなに人の話に興味ないよ。それも採用試験なんて同じような話を何百回も聞かされるんだ。
そんな中でユーモアの利いたことを言ってきたやつの得点はでかい。
しかし間違えないんでほしいんだけど、『ユーモアのある人』と『冗談ばっか言ってる軽い人』とは全然違うからな。
同世代の人を相手にしていて、別に真面目な場所じゃないなら、どれだけバカな冗談言ってもいいけど(実際そういうやつはこの世界に多い)、シリアスな場面で空気の読めない冗談を言っちゃう奴はだめだ。
もう一つ、僕が仕事中に『この人はすごいなぁ』って思ったことがある。
当時、沖縄に台風が接近する中でのフライトで、軒並み他社や自社の沖縄行きがキャンセルになる中で、自分のフライトだけキャンセルにならなかった。
那覇空港の進入方式は嘉手納基地や普天間基地が隣接している都合上ちょっと変わってて、当時は対地1000ftの高度を滑走路近くまで這った後、滑走路から3°のPATHに会合したところで降下を開始する。
1000ftって言えば東京タワー程度の高度で、飛行機にとってはかなり低い高度になる。
那覇空港へのアプローチ中、やっぱり空港ではものすごい風が吹いてて、僕はその時副操縦士だったんだけど、ビビリまくっていた。その1000ftからいよいよ降下を開始する時に、キャプテンが僕に向かって『ニヤっ』笑って、「レッツゴぅ」って言ったんだ。
こっちはクスってなって緊張が和らいだし、すげえ人だなぁって思った。
ギリギリの状況で、ウィットの効いたユーモアを魅せられる人はすごい。