パイロットになる上で一番大切なこと

2011-05-05

このパイロット養成道場もこの記事で一段落をつけようと思う。
その最後の記事にふさわしきは、『安全』だよな。

安全って何かってのは以前にも述べたと思う。
安心と安全の違い

でもここは君がパイロット候補生として採用されて、それからよきパイロットになること目的にしているのだから、別の視点から話そう。

例えばだ、君が面接官だったらどんな人をパイロットに雇うかな?
飛行経験なんてない、飛行機の知識もたいしてもってもいない人をだ。

僕もそれがずっと分からなかった。僕が就職活動していた時も、最終面接で「最後に何か質問はありますか?」って面接官に聞かれた時に、「いったいどんな人がパイロットに向いてるんですか?」って聞いてみたんだけど、その面接担当者は、「さあねー、いろいろだよ」とか言って教えてくれなかった。

つまり、『パイロットはこうでなければならない』みたいなものはないってことだ。
そんなことを言っちゃったら元も子もないんだけど、小難しい言い方をすると、『必要十分条件はないけど、必要条件』ってのはたくさんある。

意味わからないかな?もっとわかりやすく言うと、「パイロットはこんなん」ってのはないけど、「でも最低でもこれくらいは頼むよ」ってのはあるってことだ。

で、その最低の最低が安全。
前置きが長くなって申し訳ない。でも今日はいいことを教えよう。最初の問いの答えだ。
「君なら、どんな人をパイロット候補生として雇うだろうか?」

ここまで読んだら「安全な人」って答えたくなるよな?
でも、その安全ってのを口で語らせてもらえることは少ない。

このブログを読んでくれている君たちなら他の人達に比べて、安全に対する意識が圧倒的に高くなってると思う。
だから「君は安全についてどう考えていますか?」なんて質問がきたらホームランを打てると思う。
でも、そんな質問がいつも来るとは限らないよな。実際、そんな質問をする必要もないんだ。僕らが新しくパイロットを選ぶのに気にすることは一つだけだ。

『こいつの操縦する飛行機に、自分の家族を乗せられるか』

実は今回僕が言いたかったのはこれだけだ。
どんなに優秀でも、例え東大を出ていてサッカー部でインターハイに行ったやつでも「こいつの飛行機に家族を乗せたくない」って思われたらお終いだよ。

実はこの『家族を乗せられるか』っていうのは、この世界ではよく言われることでもある。
訓練生や現役パイロットに資格を与えることができるチェッカーで合否を迷った時に判断基準にするのにこれを考えるって人もいるし、訓練生を指導して、時には厳しい決断をしなければならない教官でもこれを考えるって話を聞いたことがある。

『自分がこいつの飛行機に乗れるか』だったらまだ情も入ってOKを出しちゃうかもしれないけど、家族や大事な人を乗せられるかってところがものすごくいいところをついているんだと思う。

つまり君は『安全』を、行動や言動、雰囲気で示せる人にならなければならない。

これは一朝一夕でできることではない。
最低でも軽率そうな人に見られるようではいけないし、規定を破るような人は論外だし、大事な時にパニックになって周りが見えなくなるような人も危険だ。

自分を客観的にみるために、鏡に向かって、いつもやってるように話してみればいい。そうすれば自分でこれじゃまずいなぁとか、思えるだろう。また友達に聞いてみるのもいい。自分のどこがダメかすぐにわかる。

ダメなところが分かったとして、じゃあどういう目標を持って直していけばいいのか?
それは愚問だよな。この『パイロット養成道場』を何度も読み返してくれ。

できるところから、読んで実践する。読むだけじゃだめだ。実践して、これでいいのかいつも自問自答を繰り返すんだ。

それをやる人とやらない人では1年後には圧倒的な差ができる。
せっかくここまで読んでくれたんだ、『知識』だけじゃなくて、『経験』として自分自身のものにしてほしい。