新世代旅客機について管理人はどう思いますか?
こんにちは。先日、パイロットになる覚悟について質問させて戴きました、憲伸と申します。
「絶対に自分を普通だと思うな」の記事の書き直したもの拝読しました。アドバイスしていただいたことをもとにメーデーを見たり、近くに羽田空港があるので展望台に見学しに行き、空の安全の大切さを改めて感じてきました。
つい最近、ニュースで羽三対の虫のような飛行機が開発されているという記事を見ました。その記事によると264席で2万km弱の超ロング飛行も可能とのことでした。アメリカのスタートアップ企業「SE Aeronautics」が発表した計画では、この見慣れない新設計を採用したことで、非常に「エコな旅客機」となっていることだそうです。
同社によると、1席あたりの燃料消費量が従来機より約70%削減され、二酸化炭素排出量が約80%削減できるといいます。このほか同機には、「緊急着水時に水に浮くよう設計されている」「キャビン内の空気を再循環させない空気循環システムを導入し、衛生対策をより高める」といった機能が盛り込まれることが発表されています。
私自身、航空宇宙学科に所属しているため大学に対面で通えるようになったら教授に感想を聞いてみようと思ったのですが、パイロットの意見として管理人さんにも感想を伺いたいと思いコメントさせて戴きます。
By 憲心さん
回答
憲心さん、ご質問ありがとうございます。またこのブログを参考にしてもらってとても嬉しく思います。
羽田空港、いいですよね。僕は仕事で空港に通うときは面白くもないのですが、旅行や遊びに行く時はやはり胸が高鳴ります。羽田空港のおすすめは、やはり第二ターミナルのスカイデッキでしょうか。意味不明なソファなんかが置いてあって、無料で贅沢な時間を過ごせます。
このニュース、僕も読みました。Yahoo!ニュースですが、リンクを貼っておきます。
「翼が3対」の超異形旅客機開発へ
昆虫のような形状の旅客機で、ワクワクするような形をしていますね。
非常に面白いチャレンジだと思いますが、僕の感想を述べてみます。
まず結論としては、『まだ分からんけど、報道が本当ならば画期的だ』と思います。
どこが画期的なのかというと、やはり燃料消費率のところです。
まだ分からんと言うのは、エンジンも新しく開発されているのかな?というところです。
順に説明していきますが、まずは飛行のためのヒントを、鳥から昆虫に転換させたのは非常に面白いことだと思います。ですが、これが全く新しいアイデアかというと実はそうでもなく、大学レベルの研究室でもテーマにしているところはたくさんあります。むしろ、大学という利益を追求しなくてもいい場所だから研究できるとも言えますが。
本題に移りますが、『1席あたりの燃料消費量が約70%削減』ということですが、これは本当にすごいなと思うのですが、穿った見方をすれば、全体としての燃料消費量があまり変わらなくとも、座席数を増やせば『1席あたりの燃料消費量』が減りますよね。そういうことではないと仮定して話を進めますが、『航続距離当たりの燃料消費量』を画期的に減らせるのであれば、全ての航空関係者にとって魅力のあることだと思います。
航空会社のコストして、燃料代は多くを占めます。
例えば、羽田ー那覇間のフライトを考えてみると、200席の飛行機として、80%の席が埋まって、160人のお客さんが乗ってくれたとします。
運賃は平均して1人2万円として、売り上げとしては160×2=320万円となりますが、羽田-那覇間に消費する燃料は飛行機によって大きく異なりますが、燃費が極めていいとされるB737を使って、季節にもよって大きく変わるのですが、13000lbsくらいとします。
飛行機の燃料の価格(飛行機の燃料は灯油の成分に近いです)が1リットル当たり78円(平成29年のデータ)
で、灯油の比重を0.6として、1リットル=0.6kg
1リットル= 0.6kg=0.6×2.2lbs=1.32lbs =78円なので、1lbs= 59円となります。
羽田-那覇間で13000lbs ×59円=約77万円となり、売り上げ320万円の内77万円、つまり売り上げの役1/4が燃料代に消えていることになります。
これが本当に70%削減できるなら、77万円×0.3=23万円になり、売り上げに対して7%の燃料で済むことになり、航空会社はウハウハですね。
ただ、現場で働いている身としては、『ほんとかよ』って思ってしまいます。
実際、ボーイング787なんかも最初はカタログスペックでは大幅に燃料消費率が改善されているのに、飛ばしてみるとそこまでではなかった、なんてことがあったらしいです。いやそれでもいい飛行機ですけどね。
お金の計算ばっかりして申し訳ないですが、これが昆虫型の形状にしたことで生まれたものなのか、それともエンジンも含めてのものなのか。
個人的な所感ですが、航空機の形状の最適化による燃料効率の改善は割とすでにいいとこまでいってるんじゃないかなと思います。
つまり、燃料効率を上げるには、エンジンのブレイクスルーが必要だということです。
それか、エンジンの画期的な進化はなくとも、低出力低燃費ながらも高揚力を出せる画期的な形状ってことになるのですが、そこまでの変化はあるのかなぁ、、と、頭の硬くなった僕には思ってしまいます。
燃料についてはここまで。
あとは蛇足のようなものなのですが、『緊急着水時に水に浮く』のはほとんどの飛行機でそうなっています。
または、脱出に必要な時間浮いて、そのあと沈むようになっています。
さらに、『キャビン内の空気を再循環させない』というのは現在の航空機でも可能で、それよりも与圧系統の負荷を下げるためにあえて再循環させているようなシステムになっています。どっちが優秀なシステムとはいえないのかなと。
と、最後に萎えるようなことを書いてしまいましたが、こうした新たなチャレンジは航空業界にとって、利用者にとって、そして地球環境にとって望ましいことだと思います。
アニメや映画で見たような飛行機が飛ぶ世界、面白そうですね。
今回は考えていて非常に楽しい内容でした、質問ありがとう。
航空宇宙工学科の先生に聞いてみて、是非ともその所感を僕にも教えてください。
楽しみにしています。