もし油圧がオールロスしたらどうしますか?
初めまして^ ^私は都内に住む女性です。
この前元パイロットさんと飲む機会があり、飛行機のことについて色々ききました。
もし油圧がオールロスしたらどうしますか?
『油圧はオールロスなんかしない。俺は整備士に絶大なる信頼性をしている。』
とおっしゃっていました。実際に123便での事故などもあったので、この方なりの緊急時のことを聞きたかったですが主さんならどうされますか?
こんなことを聞いてしまい申しわけありません。ただどうしても聞きたい質問なのです。
お仕事頑張ってフライトファイトです。
By ななさん
回答
ななさん、ご質問ありがとうございます。
息子をパイロットにしたい眼科医さん、ありがとうございます。
先を越されてしまいましたが、こちらの記事にコメントを転載しておきます。
ハイドロオールロスは123便に近い状況ですね。
事故の後、JALの担当者がBoeingに訪問したところ、何十回も練習したであろうテストパイロットが123便と同じ状況でシミュレーターでパワーだけを使ってなんとか生還したのを見せて、『どうだ?うちは悪くない』みたいなことを見せたらしいです。
Boeingはパイロットの中では後世に語り継がれるような恥を晒したわけですが、後世のパイロットには教訓になりました。
『ハイドロオールロスの場合にはパワーを使って帰ってくることも不可能ではない。』
ただこれはパイロットが担当する機材によって答える内容が違うと思います。
B737やB767は操縦桿とケーブルで舵面が繋がっていて、ハイドロが全てなくなってもコントロールが効きます。めちゃくちゃ重たいですけどね。
どれくらい重たいかというと、着陸の時にはパイロット二人で操縦桿を引かないとフレアーできないレベルです。
僕もシミュレーターでやったことがあって、エレガントな着陸はできないですが、生還できる可能性は高いと思います。
他の飛行機では、上の例のようにパワーを使って操縦することになるでしょう。
右翼のパワーを強くすると右の翼が引っ張られて、飛行機は左旋回します。
逆も然りです。
細かい操作は困難を極めると思いますが、山から遠ざかることは難しくないと思います。
また、これも飛行機によりますが、電源が生きていればトリムが使えます。
トリムは舵面の端っこについている小さな舵面で、本来は操縦にかかる力を弱めるために使いますが、これも操縦に使えます。
眼科医さんがコメントで触れられていますが、運航の現場では『想定外の事態』『今まで誰も経験したことがない事態』が起こり得ます。
そういう意味では、ハイドロオールロスは一度起こったことなのだから、今後のパイロットは対応できなければなりません。
しかし本当の想定外の事態に対応するのはほんとに難しいことなのですが、世界中で行われている最近の訓練はこれに注目されていて、MCCやCBTAと言われるものがありますが、『既存の規定やトラブルシューティングでは対応できない事態に対応する能力』を養うことが課題とされています。
具体的な話はこの辺の話になります。パイロットに必要な能力
しかし大切なのは、全てのパイロットがちゃんと過去の事故を研究して、『自分だったらどうやって生還するか』『類似事例にいかに対応できるのか』
それを考え続けるしかないのだと思います。
以上。最近質問が少なくて話題に困っているので、またなんでも質問してください。
ディスカッション
コメント一覧
JAL123便を教訓に、対応訓練がされているようですね。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A6%E3%83%8A%E3%82%A4%E3%83%86%E3%83%83%E3%83%89%E8%88%AA%E7%A9%BA232%E4%BE%BF%E4%B8%8D%E6%99%82%E7%9D%80%E4%BA%8B%E6%95%85
でも、エンジン出力の調整だけで操縦するの言うのは難しいでしょうね。よく半数以上が助かったものです。
整備は完璧にされていても、予想外の事故は起きる可能性があります。日頃の訓練のたまものですね。
かの有名なデニス・フィッチですね。
確かJAL123の事故を独自で調べてて、油圧が全てオシャカになった時
この事故を思い出したとか… すごい人ですよね〜
あと、ユナイテッド航空232便の機長であるアル・ヘインズ氏が2019年に
お亡くなりになったとか… ご冥福をお祈りします😞
独自で過去の事故を調べるとは素晴らしいですね。
wikipediaとかでも結構勉強になることがたくさんあります。実は英語版Wikiは航空の知識とか参考書レベルでしっかりしているんですよ。
時が経つのは早いですね。
稲盛さんも亡くなったみたいですが、航空史に名を残した偉大な人だと思います。
管理人さん
お久しぶりです
だんだんとフライトも増えてきましたね。
町にもだんだんと人流が増えて賑わってきましたし。
残念なのは、円安物価高などで海外旅行には行きにくくなったことでしょうか?
>事故の後、JALの担当者がBoeingに訪問したところ、何十回も練習したであろうテストパイロットが123便と同じ状況でシミュレーターでパワーだけを使ってなんとか生還したのを見せて、『どうだ?うちは悪くない』みたいなことを見せたらしいです。
ボーイングの自己保身もわかりますが、
ハドソン川の奇跡の映画でも、事故検証委員会で何度も練習した上でシミュレーターで近くの空港に安全に着陸できたというのを見せて、川への着陸は危険行為だと一旦結論づけていましたね。たしかその後の実証で実際には、緊急着陸することを決定した時間はもう少し遅くて、その時点から近隣空港への着陸を試みても全然成功しなくて、やっぱり仕方なかったという結末だったと思いますが。
緊急着陸は一瞬の判断の遅れがより生存確率を下げることになるのでしょうから、判断が間違っていたと言うことで断罪するような性悪説で処分すべきでは無いと思うのですが?
よく医療系SNSでも「よきサマリア人の法」について、海外では機内の緊急行為での医療過誤は免責となっていますが、日本ではそのような法整備はされていないので、訴訟リスクを考えると、特に専門外の場合はドクターコールには応じられないという話題がよく出ています。
緊急事態の場合、故意に悪い状況になるようにしたので無ければ、罪に問うべきでは無いと思いますね。
息子をパイロットにしたい眼科医さん、お久しぶりです。
フライトも増えてきて、旅客も国内線はコロナ前と同程度くらいにまで回復してきました。
大型機を担当している友人に聞くと、『特にアメリカのステイはお金がかかってやばい』と言います。アメリカはインフレもすごいみたいですが、円安はいつまで続くのでしょうかね…
ドクターコールの話は初耳でした。
限られた時間と情報、機材の中での医療を行なわなければならないのに、それはリスクは大きいですね。
それでもドクターコールに応じてくださる医師には頭が下がりますが、法整備は必要ですね。
パイロットの判断ミスについては、すごく微妙ですね。。
今回のように時間的余裕が全くない中での判断ミス(今回はミスではないですが)は人間である以上避けられないと思います。
一方で、時間的余裕がある中での判断ミス。これはしっかり情報を集めたり、アドバイスを聞くことで避けられたかもしれません。
またヒューマンエラーと言われる、これも人間である限り避けられないミスもあります。『やり忘れ』とか、『思い込み』とかですね。
どこまでがパイロットの過失で、どこからはどうしようもなかったという線引きは明確に決まっていないと思いますが、上の例ではやはり全てパイロットに責任ありとされてしまうと思います。
それは『それがパイロットの存在意義だから』と言えるのかもしれません。
でもやっぱりこれは難しいですよね。
上昇中高度10000ftくらい(離陸から5分後くらいです)で急に全てのエンジンが止まって、川に降りるという判断はそうそうできるものではありません。何も考えられずにアワアワしている間に墜落、そんなシナリオもあったかもしれません。
この機長は日頃から『こういう緊急事態があったらどうしよう』と備えていたらしいですが、すごい人だなと思います。
一方で、『自分だったらこういう時どうしようかな』というのは全てのパイロットが考えていなければなりません。
僕も当然考えていますが、高度にもよりますが、出発した滑走路に向かうと思います。
難しいですね。なんだか取り留めのない話になってしまいました。