マルチタスク能力

2011-02-15

よくパイロットに必要だと言われる能力、マルチタスクについて話そう。

なんでかこの言葉はみんな知ってるよな。日本語にすると『一度にいろんなことをする能力』かな?

この力が必要なのは事実だが、もう一つセットで知っといてもらいたい言葉がある。
タスクマネジメントだ。もうちょっと意味の分かる言い方をすると、『タスクの順位付け』だな。

パイロットの中でよーく耳にする言葉がある。

FLY FIRST って言葉だ。

まだ意味わかんないよな?

要するに、この仕事では『今、何をしないといけないのか』が超重要なんだ。そんなの後でいいだろってことはほんとに後でいいんだ。でその中で一番大事なタスク(仕事)が、FLY=飛行機をコントロールすることだ。だからFLY FIRST

そんなの当たり前じゃないかって思うかな?

それがそうでもないんだ。特に今はオートパイロットって便利なものがあるから『逆に』これが難しくなった。

まあてっとり早く例を挙げておこう。本当にあった事故の話だ。

1972年にマイアミ国際空港であった事故の話だ。イースタン航空401便

マイアミ国際空港への進入までは異常がなかった。しかし、パイロットは着陸のためにギアを降ろしたが、ギアがちゃんと降りていることを知らせるライトが点灯しなかった。そこで機はGO Around(着陸のやり直し)を要求し、また上昇した。

機長は副操縦士にオーパイを入れることを指示し、その後ギアのライトが何故つかないのか議論した。

その時、機は誰も気づかないくらいの小さいレイトで降下を始めた。
その間、機長、副操縦士そして航空機関士の三人ともギアのトラブルの処理に追われていた。

そして最初に副操縦士が高度が異常に低いことに気がついたが、もう遅く機体は地面に衝突した。

これにより旅客94人が亡くなってしまった。

彼らの犯した最大のミスは先ほどのFLY FIRSTを守れなかったことだ。

それで、人を死なせてしまう。

本来あるべきタスクマネジメントとしてはキャプテンが操縦を行い(高度や速度のモニター)、コーパイにトラブルシューティングを行わせるべきだった。

さらにその上で管制官と通信して安全な高度への許可をもらって、ギアが出てなかったときの対応策、燃料はどれくらいもつのかを計算する。

やるべきことには順番があるってことだ。

ついマルチタスクのことから脱線してしまったが、マルチタスクについてはたぶんみんなが想像している通りだ。

例えば操縦しながら目的地の天気のことを考えたり、燃料を計算したり、管制官と交信したり。

でも飛行機ってのは二人で飛ばすものなのだから、それよりもこのタスクマネジメントの能力が重要だと僕は思う。

そして勘違いしてほしくないが、こんな能力を君ら学生に期待してる人なんかいない。

君達がこの能力について対策する必要は全くない。というより、『何が重要か』を考えるにはそれ相応のフライトに関する知識が必要なんだから、不可能だ。

ここではそれがどういうものかだけ解ってくれればいい。