コックピットのスイッチは全て使っているのか

以前いただいた質問でもあったんだけど、『コックピットのスイッチは全て使っているのか?』

テレビやネットの写真とかでたまにコックピット内が映されて、天井から壁にまでびっしりとスイッチが配置してあるのをみたことがあると思うけど、ほんとにこんなに多くのスイッチを使うのか?

非常にいい視点なのでこれについて記事にしてみたいと思う。

まず結論から言うと、『ほとんどのスイッチを使う。』ということになる。
ほとんどというのはどういうことかというと、コックピット内のスイッチ、計器はパイロットが使うものと、整備士が使うものが配置されている。

整備が使うスイッチの代表はCB:サーキットブレーカーというもので、これも大量にあるんだけど、B737ではコックピットの後方の壁にびっしりと配置されている。
サーキットブレーカーというのは特定の機器を電気的に遮断してシステムから切り離す時に使ったり、特定の機器に過大な電流が流れてしまった時に他のシステムへの被害の拡大を防ぐために自動で電気を遮断するようになっている。

パイロットが普段使うものではないので、コックピットの後方に配置されているんだけど、前面にもこういうのが少しだけある。
が、その他のスイッチや計器は全て使うし、当然どのスイッチにどんな意味があるのか知っていなければならない。

実はこの辺が飛行機のいいとこであり悪いところであり、使い手に大きな労力や知識を強いるシステムはシステムとしては優秀とは言えず、簡単に誰でも扱えるものほど優れたものともいえ、当然この流れに沿って飛行機も進化してきている。

B737のコックピットに比べて、B787のコックピットはずっとシンプルになっているんだ。

でも残念ながらB737に配属されたパイロットはこのスイッチを全て覚えなければならないので、訓練の初めにそれを頭に叩き込む必要がある。
コックピットにはスイッチもそうだけど、不具合を知らせてくれるライトもたくさんついている。

例えば、「No2の電源に異常がありますよ」とかを知らせるライトや、「No1エンジンに火災があります」なんてドキッとするライトがある。

最新の飛行機にはそれらの情報をまとめて画面に表示してくれるシステムもあるんだけど、残念ながらこれもクラシックな飛行機にはついていない。

しかしそれら全てのスイッチをフライトで使っているわけではない。

プリフライト(飛行前のセットアップ)でのみ触るスイッチもたくさんあるし、映像で見ているよりはずっと多くのスイッチ操作を毎フライト行っているけど、飛行機に何か不具合があった時のみ操作するスイッチや特定の状況でのみ操作するスイッチもある。

しかし、上のスイッチ全てがどういう状態にあるのかはパイロットは把握しておかなければならない。

例えば整備士がメンテナンスのためにスイッチを操作して、それを本来あるべき位置に戻しておくことを忘れていることだってあり得る。
だからパイロットは飛行前に全てのスイッチを確認する。

しかしあれだけの量のスイッチをなんとなくで見ていれば必ず抜けがでるから、スイッチを確認していく順番が決まっている

これをSCAN FLOWと言うんだけど、基本的には左から右、上から下に順番にスイッチを操作したり、あるべき位置にあるのかを確認していく

それが終わったらプリフライトチェックリストというものを用いて、もう一度スイッチ等を確認する。

たかがスイッチと思うかもしれませんが、間違えると大変な事態になるものもある。

例えば、飛行機では与圧がされているけど、この与圧を動かすためのスイッチが入っていないと大変なことになる。

さらに飛行機には同じようなスイッチがたくさんあって困る。

間違えて切ってはいけないスイッチを切るってことも事故のもとになる。
だからパイロットはスイッチの名前や意味は必ず知っておかなければならない。

さっき挙げたライトの点灯する条件なども複雑なんだけど、覚えなければならない。

と、まあ大変そうなんだけど、一度覚えちゃえばあとしばらくは同じ飛行機に乗るんだから、まあそんなもんだと思うしかない。