自社養成パイロット

2011-01-24

ここでは自社養成パイロット訓練がどう進んでいくかを述べよう。
さらに自社養成パイロットの一般的な採用試験はどのような試験があるのか、またどんな人物が求められているのかを述べたいと思う。

自社養成パイロットとは、現在ではパイロットになる主流の方法で、エアラインが飛行経験のない者を、パイロット候補者として採用するという制度だ。
受ける人は、大学生であることが条件で、一般の就職活動の一つとして航空会社に応募して、見事合格できれば訓練を始めることができる。

自社養成パイロットを行っている会社は、日本航空(今は採用を凍結しているが)と全日空の2社が毎年行っているが、実はその2社だけでなく、大手航空会社でなくとも年によっては行っている。
スカイマークやピーチも自社養成パイロット募集をしているようだ。

各自、航空会社の採用ホームページを定期的にチェックしてみてくれ。C制度って表現されているかもしれない。

採用試験については、各エアラインのホームページを見れば分かると思うけど、一般的には次の内容だ。
1.筆記試験
2.心理適性検査
3.面接
4.飛行適性検査
5.航空身体検査
6.英会話面接
7.最終面接

といった具合だ。おそらく、他のどの職種よりも長い期間をかけて採用活動が行われる。
順番に説明しよう。

最初に筆記試験。これは各会社が独自に筆記試験を用意してる場合もあるし、SPIみたいに外部に委託してる場合もある。
内容は一般教養だ。漢字とか、計算問題とか、簡単な物理とか。
英語だけ別でやってるとこもある。リスニング試験があるからね。
対策としては、みんなやると思うけどSPIとか、公務員試験の問題集とかをやっておけばいいだろう。
大事なことなんだけど、満点を取るつもりでやってくれ。リスニングを含めてだ。
実際何人の人が受けるのか正確な数字は知らないけど、何千人っていう人が応募してる。
みんな君と同じ年くらいの大学生だ。

当然だけど、東大生や京大生、慶応大学の学生もわんさか受けてる。
で、やっぱり一流大学のやつらは当然のごとく9割くらいの点数は取るよ。
厳しいことを言うようだけど大事なことだからしっかり聞いてほしい。
もちろん結果的に採用されてるのは上に挙げた一流大学の学生ばかりじゃない。
でも、何千人って人をみんな面接してる程会社は暇じゃない。
だから面接するまでにある程度はふるいにかけなきゃいけないわけだ。
エントリーシートと筆記試験だけで。

志望動機や自己PRなんてみんな書いてることに大差はない。
学生にして会社を経営してましたなんてやつは『おっ』って思うけど。
つまり、はっきり言うと、学歴もないわ筆記試験も取れないわなんて人は論外なんだよ。
誤解しないでほしい、最後まで残るのは高学歴の人だけじゃない。
むしろ僕は高学歴じゃない人のためにこの記事を書いてるつもりだ。

だから、君が大学名で不安を持っているなら、筆記試験で文句なしの点数を叩きだしてほしい。
この仕事はお勉強ができる人に向いてるわけじゃない。
だから、ほんとに学歴なんてどうでもいいんだよな。出世して会社の偉い人になるなんてことも少ないし。
だからもし君が名前が天下に名前が轟くような大学に行ってなくても、全く気兼ねしないで頑張ってほしい。
学歴の話はもうやめよう。

次は心理適性検査だな。
これは、よくあるのが、クレペリン検査とか、ロールシャッハテストとか、MMPIとか言われているものだ。
この試験は本当にうんざりするよ。特に就活中はいろんな会社の全く同じようなのをたくさん受けることになる。
クレペリンは横に足し算を続けていって、ストレス耐性みたいなのを見る試験。
ロールシャッハはコーヒーのシミを見て何に見えるかを答える試験。これはうつ病とかを見つけるのかな?MMPIは簡単なアンケートに答えていくものだ。これは嘘をつくとばれる。

対策はいらない

普通の人が普通にやれば、誰でも通る試験だ。
基本的に採用試験ってのは相対評価で上から何人かが通るって試験と、絶対評価である基準を上回っていれば何人でも通るって試験があるけど、これは絶対評価。
異常がなけりゃ通る。

君がうつ病や精神分裂症じゃないなら、何も画策しないで受けるべきだ。
自分をいいように見せる必要すらない。
むしろ、嘘の自分を作るとどこがで矛盾するから逆効果だ。

次は面接

これはそんまんまだけど、正しい答えや絶対的な基準がないぶん一番難しいところだと思う。でも、『どんな人が通るんですか?』って聞きたいよな。
そんな人はパイロット養成道場に入門だ。

次は飛行適性検査

これは長くなるから別の記事にまとめてる。後で必ず読んでくれ。
航空適性検査

次は航空身体検査

最大の関門と言ってもいいものだよな。これも別記事だ。
航空身体検査
他にも健康についてはこのブログでもたくさん取り上げてあるので興味のある人は読み込んでほしい。

次は英会話面接

こんなの通る気がしないっていう人もいるだろう。
でも僕もそんな一人だったから、君にもできるはずだ。
僕は留学もしてないし、英語でしゃべるなんて全然できなかったけど、とりあえずはエントリーシートに書かないといけないTOEICで高得点を取った。

ちゃんとしゃべらなきゃいけないけど、ペラペラである必要はない。英語で趣味とか、志望動機とか自己紹介とかをできればいいレベルだ。何も政治問題について論じよってもんじゃないんだ。君にもきっとできるようになる。

英語についてもこのサイトではたくさん紹介してる。参考にしてくれ。

パイロットになるには英語は必要なのか?

最後に最終面接

これもまだ気を抜けない。本当に君に乗客200人の命を預けても大丈夫なのか見られてるだろう。
まあ聞かれる内容なんてどの面接でもほとんど一緒だ。面接する相手が偉くなっていくだけだ。

とまあこんな具合で選考が進み、見事全ての試験に合格できた人がパイロット候補生になれるわけだ。
まあ長くなったから今日はここで一休みしてもらってもいい。

でももうちょっとって人には自社養成パイロットの訓練がどう進んでいくかを説明しよう。
自社養成の訓練は基本的に以下の順に行われる。

パイロットの訓練はまず地上座学から始まる
その目的は3つの座学国家資格をとること。
1.事業用操縦士
2.計器飛行証明
3.航空無線通信士
その3つだ。

地上座学の進め方は航空会社によって違う。
上の3つを一気にやってしまってから、海外に行って実機訓練を始める会社もあるし、事業用操縦士まで座学国家資格をとって海外でフライトして、実技の事業用操縦士とってまた日本に帰国して次は座学の計器飛行証明の国家資格をとって、また海外へ行ってフライトするっていうスケジュールの会社もある。

3の航空無線通信士はおまけみたいなもんだ。もちろんないと困る資格だが、入社する前にとってしまう人も多い。

ここまで地上座学にかかる期間は、会社によっても異なるが、だいたい半年~一年だろう。
出社して、1時間目から6時間目まで教官に各課目を教えてもらって、帰って自分で復習する。
体育の授業まであるから驚きだ。

学生みたいだと羨ましがる人がいるかもしれないが、その通り。しかし楽ではない。
この世界には『チェック』というものが存在する。

チェックはパイロットにとっては宿命みたいなもので、退職するまで続く。
合格できなければ、飛行機を降りなければならない。
座学のチェックも、みんな必死で勉強する。僕もこんなに勉強したのは人生初めてってくらい勉強したよ。

次に見事座学の国家資格を取得したあかつきには、海外での実機飛行訓練に進むことができる。
国は航空会社によって違う。日本航空(訓練所を潰したが)、全日空もアメリカだな。
これが本当に辛い。
毎日フライトして、次のフライトの準備をして、さらにチェックの口述審査のためのお勉強もしなければならない。
期間としては1年~2年ほど。ここでフェイル(訓練中止)を言い渡される訓練生も数多い。

しかし無事すべてのチェックに合格すれば、飛行気乗りとして胸を張って日本に帰ることができる。この瞬間は人生最高の瞬間だと感じることができるだろう。

次に待っているのが、シミュレータ訓練だ。
みんなもテレビ等で見たことがあるだろうが、フライトシミュレータと呼ばれるでかい箱に入って、その架空世界の中で飛行機を操縦する。
その中では離陸直後にエンジンが故障したり、コントロールが効かなくなったり、火災がばんばん発生する。

1時間半のフライトだが、終わった時には汗でぐっしょりになっているものだ。
これが終わると、次はとうとう本物のジェット機に乗ることになる。
どこでジェット機に乗るかは、自分が乗務予定の飛行機によって違う。有名なのは昔テレビでやってた下地島だろう。
ここでローカル飛行と呼ばれる訓練を行う。初めてジェットに乗る感覚は、今まで乗っていたレシプロ機とまるで違って、格別だ。

これをクリアーして、やっと、やっと、型式証明の取得。つまりコーパイになるための資格をすべて集められたことになる。

しかし訓練はまだ終わらない。次は、路線訓練が待っている。
これは左席にキャプテン、右席に自分、そして後ろに審査官を乗せて、さらにお客さんを乗せて行う訓練だ。

初めてお客さんを乗せる。その責任の重さに震えるよ。
これを社内の審査に合格して、やっと副操縦士に昇格。3本線を巻くことができるのだ。