自社養成既卒者採用の面接で求められること
今日は自社養成パイロット試験における既卒者採用について考えてみたい。
僕が自社養成パイロットの試験を受けていたのは20年くらい前で、その時は新卒採用しかなかったし、募集要項には『過去に当社自社養成パイロットを受験していないこと』みたいな但し書きまであった。
現在(2023年10月時点)はJALは30歳程度までOKとされているし、ANAも卒業後3年以内なら受験可能。その他の航空会社も受験資格を既卒をOKにしているところが結構ある。
自社養成パイロットの門戸を広げた理由は色々あるんだろうけど、今パイロットになりたいと思っている人にはいい環境だと思う。
それで既卒で自社養成試験を受ける上で、以下のポイントを考えてみたいと思う。
・新卒の受験者に比べて有利か不利か
・面接で見られる点
・面接で答えられなければならないこと
まずは既卒で受ける場合に新卒と比べて有利なのか不利なのか。
僕は採用活動を行なったことがないのであくまで個人的な意見なのだが、これは有利も不利もないと思う。
というのは前提が違うから。
全く同じ能力、性格、経験を持った人間であればそりゃ若い方がいいに決まっている。
でもそんなことは基本あり得なくて、既卒で他で働いた経験があるならばその分の学びや得たものがあるはずだと思う。
サボり散らかしていたならば厳しいけど、例えニートをやっていたとしてもその経験から学んだことがあって人として成長して魅力のある人物になっていたならば全然OKだと思う。
筆記試験、英語試験の点数などは高得点で当たり前の世界なのでここを通過している前提で話を進めると、採用というものは『人物』という数字では測れないものをなんとか定量化して採用する人を決めないといけないわけで、1000人を超える受験者からどうやって合格者を決めるかって非常に難しい。
システムとしては面接を細分化して人事目線、管理職のパイロット目線、会社の役員目線とかでマルバツをつけてトーナメント形式の勝ち残り戦をやっているわけだけど、そこでマルバツを決める面接担当者が、多少の年齢差や、既卒か新卒かどうかなんて気にするだろうか?
僕の感覚ではそんなの死ぬほどどうでもよくて、『この人魅力あるなー』とか『この人に会社に入ってきて欲しいな』という人に○をつけるんじゃないかと思う。
確かに、2.3年ならまだしも5年を超える年齢差は目につくとは思うけど、現実的に『この人が同期よりも将来5年早く退職する』って、結構どうでもよくないか?
だから前職があって歳をとっていたとしても、それなりの経験があり人間性が伴っていれば全くマイナスにはならないと思う。有利も不利もない。
では次に面接で見られる点について考えて見たいと思う。
これはやっぱり違うよなと思う。何が違うのか言語化するのが難しいんだけど、まず『雰囲気』ってあるのかなと思う。
新卒時であればまだ社会人を経験していないわけで、仕事に対する責任も知らない。
様々なことに対する見識が不明確で、なんとなくふわふわしてしまうのも仕方ないと思える。しかしその中でも芯が感じられる人が好まれる。
既卒ではどうだろう?仕事に対する責任感は持っていてしかるべきだし、立ち振舞い、話し方などの基本的なものが身についていないと『なんだこいつ』となると思う。
要するに既卒と新卒では『学生』か『社会人』かという明確な違いがあるので、そこはクリアーできてないとダメ。
『雰囲気』って性格からの変えられない部分と経験によって変えられる部分があって、それは社会人経験の中でちゃんと身につけておく必要があると思う。
またもう一つ気をつけて欲しいのは、経験があるからとプライドが高そうで、同期とうまくやっていけるか不安な人はまずいと思う。
知っての通り、パイロットの訓練は同期と助け合うことが必要になるので、自分から助けを求められない人、周りから助けてもらえない人は(少なくともそう見える人は)合格をもらえないと思う。
最後に面接で答えられなければならないことについて。
自己PRや志望動機とは別に、既卒採用ということで当然聞かれるであろう質問があるとしたらこの辺だろうか。
・なぜ新卒採用時に受験しなかったのか。受験していて不合格だったならばなぜ落ちたのかの客観的視点
→やはりパイロットって特殊な仕事で、他業種からのキャリアの変更にしては大きなジャンプになる。
新卒時にパイロットを志望していなかったのに、なんで今から?というのは誰もが疑問に思うところだと思う。
また新卒時に受験していて再チャレンジ、というケースではなんで落ちたのか?という客観的考察と自分が合格するために何をやってきたのか、過去の自分と何が違うのか?という論理的な説明が必要だと思う。これはパイロットの訓練のプロセスそのものになる。
・現在の仕事について。どういう思いでその仕事をやってきたか?どんな工夫をしてきたか?どんな時にやりがいを感じるか?何が辛いか?などなど
→パイロットとは全然違う職種だから関係ないということはなく、仕事に対する向き合い方だったり、問題発見、解決のプロセスは今後の訓練でも必要になる。
というか、『やりたくない仕事だったから適当にやってきました。』という人はやっぱり次も同じことをするだろう。
とりあえずそんなもんだろうか?強調して言いたいのは、既卒で周りの受験者に比べて歳をとっているからと気後れする必要は全くないし、別の仕事を誇りを持ってやっていていい。
むしろ心底やりたかった仕事じゃなくても誠実に向き合って、またそこからいろんなことを学んでいる人であれば、本来やりたかった仕事につければそれ以上のモチベーションで臨めると思う。仕事に対する態度がわからない新卒を一か八かで採用するより、安パイである気もする。
以上、既卒で自社養成を検討している人は考えてみてほしい。