パイロットのサービス精神について質問です。
初めまして。
私は、パイロットを目指しております大学4年の者です。
昨年は、航空大学校の受験に失敗しましたが、パイロットという職業をどうしても諦めきれずに、院に通いながら学部既卒で自社養成に挑戦しようと考えております。
そこで、私はパイロットになって何がしたいのかということ考えました。
ずばり、「お客様といちばん近いパイロット」になるということです。
私は、過去にこんな経験をしました。
1. 某国内航空会社を利用させて頂いた際に機内アナウンスを聞いたことがあります。自分には、パイロットという存在が大きすぎて、機長の声を聴く事でさえ感動しましたが、一方で寂しさも感じました。というのも、お客様とパイロットの距離がまだ遠く感じてしまうという事です。コックピットの一枚の扉が隔てる物理的距離以上に、心的距離を感じました。航行中に、コックピットの扉を開けてはいけないことは、知っていますが、まだまだ遠い存在に感じてしまいました。
2.海外某航空会社を利用させて頂いた時、飛行機から降りる際に、コックピットからパイロットが出てきて、客室乗務員と並んで「ありがとうございました」「行ってらっしゃいませ」(もちろん英語です)というように、お客様にあいさつをしている光景に出会いました。さらに、日本人の私を見て「アリガトウゴザイマシタ」と日本語でお礼を言って頂きました。パイロットのサービス精神に、非常に感動しました。
これらの経験から、私は「お客様といちばん近いパイロット」になるために、お客様が飛行機から降りる際に、コックピットからパイロットが出て感謝の気持ちを伝えるという事を実現したいと考えています。
前置きが長くなってしまいましたが、管理人様に質問です。
日本の航空会社において、このような事は、本当にできるのでしょうか。
そして、自分で書いておいて恥ずかしいですが、どこか絵空事のような、現実離れしているような、幼稚なような、そんな印象を自分で抱いてしまうのですが、パイロットである管理人様から見てどのようにお感じになるでしょうか。
長文になってしまいましたが、ご回答お待ちしております。
By 0317さん
回答
0317さん、ご質問ありがとうございます。
幼稚だとは思いません、どんなことであれ、理想を描くのは非常にいいことです。
日本の航空会社で、お客さんが降機する時にコックピットからパイロットが出てきて、感謝の挨拶をできるのか。
うーん、どう答えていいのか、難しいですね。不可能ではないと思いますが、ハードルは高いかもしれません。会社のしかるべき人を動かせれば、いけるかもしれません。
まず、もちろん会社によって飛行機のオペレーションには規定(マニュアル)があります。
それは非常に細かく定められていて、コックピットドアの開閉についても例えば『お客さんが全員降りた後にドアを開ける』みたいな書かれ方をしている(ことが多い)と思います。(こんな場合は開けていいなど、例外もあります)
海外の会社はそんな風には書かれていないのだと思います。だからパイロットが出てきて挨拶をすることができるのでしょう。
だから、現行の規定では多くの日本の航空会社においてお客さんが降機中にコックピットから出てくることはできません。
規定違反となってしまいます。
じゃあその規定を変えればいいじゃないか、と言ってもそれほど簡単ではなく、航空会社の規定を変更するには航空局に持って行って許可をもらう必要があります。
もちろん、それぞれの航空会社にはその規定を管理している部署があります。
で、航空局は神様みたいに何でも決めれるのか、というとそうでもなく、基本的にはICAOなどの国際基準に沿って規定を判断していて、「規定にはこういう項目を入れなさい」みたいなガイドラインがあり、それに各航空会社は従う必要があります。
実はコックピットドアの開閉についてもガイドラインにおいて言及されています。
航空業界というのは安全性を高めるために本当に堅牢なルールによって守られているし、逆に言うとそれによってがんじがらめになっているとも言えると思います。
だから今の状況を変えて、パイロットがコックピットが出てきてお客さんの前に出るためには、上のことを一つ一つクリアする必要があります。なんとなくハードルの高さがイメージできたかな?
海外の航空会社がやっているのを見ると、不可能ではないのだと思いますが、組織を動かすというのは簡単なことではないでしょう。
まずはパイロットになるのが第一なのだと思いますが、その後にそれが君にとって本当に大事なことだと思うのならば、そこで頑張ればいいんじゃないかなと思います。
個人的には君の考えは好きです。僕も以前、目的地の天候不良によりダーバートした際に、飛行機を降りていくと、搭乗口のところで困っているお客さんを見たことがあります。
当時の機長が「謝って行くか」とそのお客さんに挨拶しに行きましたが、それは非常に稀なことだと思います。しかし、そういったパイロットとお客さんの接点はあってもいいと思います。
君が僕の後輩として入ってきて、そんなことが普通になる会社に変えてくれたならば嬉しく思います。