パイロットは何を勉強しているの?

はじめまして、いつもこのブログを楽しみにしています。
パイロット志望の大学生です。
パイロットは勉強とチェックが大変だという話をよく聞きますが、具体的に何を勉強して何のチェックが大変なのでしょうか?
マニュアルのリバイス?身体検査?
よろしくお願いします。
By うたさん
回答
うたさん、ご質問ありがとうございます。
マニュアルのリバイス、面白いことを知っていますね。これに航空図のリバイスもありますが、これらは本当に面倒で、いやなものです。
マニュアルが電子化されていれば楽にはなりますが、それでもどこが変わったのか、なんで変わったのか、それはチェックで聞かれることで、毎回しっかりと勉強しなければなりません。
チェックというのは定期審査のことで、機長と副操縦士で少し違いますが、ざっくりと年に2回、シミュレーターによる審査と、路線による審査があります。
審査はオーラルという口述試験と、シミュレーターでは離陸直後のエンジン故障などのノンノーマル。路線審査は営業便でノーマルのオペレーションを適切に行えるかをチェックされます。
これに不合格となると翌日からのフライトがキャンセルになって、追加の訓練や審査があります。あまりないことですが、これの出来が悪いとパイロットとして不適合ということで職種変更となることもあります。
これと様々な定期訓練というものがあって、シミュレーターで飛行機のいろんなところが壊れたりとか、CRMといってクルー同士の連携をうまくとれるかの訓練があり、これもやはり事前に勉強をします。
ここまでは毎年やってくるので、半ば強制的に勉強しなければならないものですが、知っての通り、副操縦士から機長に上がるのは大変です。パイロット訓練生から副操縦士に上がるのと質は違いますが、もっと大変かもしれません。この勉強をしなければなりません。
この勉強は難しいもので、何を勉強すればいいのかが明確ではありません。
昔ある機長にそれを訪ねた時に言われたことがありますが、「全部」です。
シップの責任者として、不確定な事態に対処しなければならないのだから当然ですが、多分最初は何をどう勉強していいのかすらわからない、という事態になると思います。
例は本当に無限にありますが、例えば、離陸前のタクシー中にお客さんが暴れ出したらどうする?航空法ではどう規定されてる?社内のマニュアルでは?では実際のオペレーションではどうする?スポットに戻るの?誰にどういうことを連絡するの?スポットに戻ったら燃料はもう一度積むの?
なんてことを、起こりうる状況を自分でイメージして、自分が勝手にこれがいいと思うではなく、法や規定に沿った対応を考えて、でも実際はそうもいかないことがあるので、できるだけリーズナブルに自分で考えを持っておくってことを一つ一つやっておかなければなりません。
気象に対する対応や、飛行機の故障に対する対応なんかも、対処するには膨大な知識が必要になります。
いわゆる「これだけは押さえてね」っていう定石はあるのですが、それよりも自分で勉強すべきことを見つけて、それを身につけていくという能力が必要になるのだと思います。
この勉強には終わりがありません。
終わりがあるとすれば、「もう俺はこんなもんでいいか」と思った時です。
60歳前後の機長が、未だにめちゃくちゃ勉強していたりします。ここまでくると本当に好きじゃないとやってられないだろうなと思いますが、この人には永久に追いつけないだろうなって思うこともあります。
以上、なんとなくはイメージできたかな?
決して甘い世界ではありません。ずっと受験生を続けているような感じです。