滑走路の使い方

2011-06-11

何をいまさらと思うかもしれないけど、僕がこれを始めて知ったときは驚いたものだ。

そこにはいろんな工夫が凝らされている。

フライトを行うには毎回ここを通らないといけないから当然なんだが。

滑走路って、いってみればでかい一本の道路だよな。
でも、その一本の滑走路を状況に応じて2通りに使い分けているのを知っているかな?

飛行機が離着陸をする際に常に追い風になるように、どっち向きに滑走路を使うのか管制官が決めてるんだ。
飛行機って常に風に向かって離着陸を行っていることは知ってたかな?また今度説明しよう。

ちなにみ、今滑走路をどっち向きに使っているのかは管制官が教えてくれるし、パイロットは必ず出発前に現在どの滑走路を使っているのか確認して、使用する滑走路の変更の可能性があるのかなんてこともブリーフィングする。

風って普通はそんなにすぐに変わるもんじゃないんだけど、前線が通過したりすると急激に風向が変わるんだ。
それを予測できていなかったりすると、コックピット内で忙しい思いをしないといけなくなるから、あらかじめその可能性がある時は準備しておく。

さて、ここで羽田空港の滑走路を見てみよう。

スペースの関係上、最近話題のD滑走路は割愛させてもらった。

羽田空港 滑走路

ここでA滑走路に注目してほしい。
RWY16R/34L:ランウェイワンシックスライト/スリーフォーレフトって呼ぶ。

上の数字はランウェイの向いている磁方位の上2桁を指す。
つまり南向きには方位160°の方向で、反対向きには180°足して340°だよな。

これは、南からの風が吹いている時はRWY16Rを使って風に向かって離着陸を行うし、逆に北風が吹いているときはRWY34Lを使う。(実際には羽田空港では交通流の円滑化のために別の運用をしている)

LとかRっていうのは、同じ方向の滑走路が同一空港内にある時は、それを区別できるように左側にあるものにはL:Leftを付けて、右側にあるものにはR:Rightを付けているんだ。

羽田ではA滑走路とC滑走路が平行に作られているよな?

RWY16の方向で見ると、A滑走路が右手にある。

だから、A滑走路にはRWY16Rとつけて、C滑走路にはRYW16Lと名前を付けている。
このLとかRってとても重要で、間違えると大変なことになる。

さてイメージトレーニングをしてみよう。

基本的にアプローチの終盤ではランウェイに向かって真直ぐアプローチしていくけど、滑走路から遠く離れた上空から人間の目で見れば、滑走路ってそんなにすぐに認識できるもんじゃない。

もちろん慣れた空港だったりしたらすぐにも判るんだけど、天気が悪かった日にゃあ相当注意して滑走路を探さなきゃいけない。

そんな時に平行滑走路があって、そっちが先に目入っちゃったりすると、人間には『Wishful thinking』が働く。まあようは自分の都合のいいように解釈してしまうわけだ。

「あ、あれが自分の降りる滑走路だよな」なんて思っちゃうもんなんだ。

そんなバカななんて思う人ももうちょうっと考えてみてくれ。

自分は飛行機を操縦している。
着陸のフェーズなんて一番忙しいときなんだ。

スピードや高度はあっているか。チェックリストは終わらせたか。管制官とのやりとりもある。
はっきり言って、滑走路をじっくり眺めている暇なんかないんだ。

そんな中、自分はRYW16Rに着陸の許可をもらっていたのに、間違えて16Lに向かってしまったとしよう。

するとその16Lには離陸待ちをしている飛行機がいるかもしれない。

そうなったら大惨事だよな。

だから滑走路の確認はとても大事なことだんだ。

話は変わるけど、滑走路の作る方向にはちゃんと意味があることを知ってたかな?

その空港周辺の地形や、その空港でよく吹く風に合わせて作られているんだ。

羽田空港はRWY16R/34L RWY16L/34R RWY04/22の三本だったよな。さらにD滑走路が航空トラフィックの増加に対応できるように作られたものだ。昔は3本の滑走路だけで運用してた。

羽田空港ってのは海に面しているよな。

こういう場所では海風が卓越する。
海風ってのは陸と海の気温差によって、海から陸に向かって吹く風なんだけど、詳しくはこれもまた今度説明しよう。

海の近くってのは夏とか冬は風が強いところが多いよな?

羽田空港ではこの海風を考慮して、常に風に向かって飛行機が離着陸できるように海に向かって滑走路が伸びているってわけだ。

以上、君も次に飛行機に乗る時には、空港の滑走路が何本あるのかちょっと見ておいて、「今日はどの滑走路を使うのかな」なんて意識してみるといい。

上級者は当日の天気図を見て、「今日はこの滑走路を使うだろうなー。」なんて予想できればきっと面白いよ。
もちろん僕らパイロットは毎日やってることなんだが、気象の勉強として大変役に立つ。