自社養成の訓練で先に知っておいた方がいいこと。今後の完全自動操縦についての展望
はじめまして。
いつもブログを拝見させていただいております。
私は、有難いことに自社養成の選考で内定を頂き、いよいよ来年から憧れの世界に入らんとする者です。
選考の過程では管理人様の記事を何度も読み、自分の中で言葉の意味を反芻させていただきました。本当にお世話になりました。
本題ですが、管理人様がパイロットになるにあたって
「これは初めから知っておいたらよかったな」
と思うことがありましたら、ぜひ教えていただきたく思います。
ひとまず内定を頂いたものの、わからないことだらけで、自分の将来のことを考えると、期待と不安が入り混じって居ても立っても居られない状態です。
また、よろしければ今後の完全自動操縦についてのお考えも聞かせていただきたいです。
つい最近、エアバスが無人化を検討しているといった旨の記事を目にしました。(元記事見つけられませんでした、すみません)
これは私の考えすぎかもしれませんが、私は自分自身を最後の世代のパイロット訓練性になるのではないか、と思うことがあります。
それぐらい、漠然とした不安を持っています。
長くなってしまいましたが、何卒宜しくお願い致します。
By ジョイさん
回答
ジョイさん、ご質問ありがとうございます。
まずは自社養成合格、おめでとうございます。長い間頑張ってこられたのだと思います。
まずは最後の楽しい時期を大事にしてください。
内定から入社までの間が人生で一番楽しいかもしれませんから。
冗談はさておき、『初めから知っておいたらよかったな』ですか。
実はあんまりありません。
なにしろ自社養成はもう歴史が長いので、カリキュラムも、先輩からの引き継ぎもしっかりとしています。
僕も実機訓練が不安だったので、プロシージャなどのテキストが配られた時に先取りして勉強したりしましたが、あんまり意味がなかったなと思います。
それらよりも意外に大事なのが、『同期と関係をしっかりと作る』ということだと思います。
これは訓練に入った時に口を酸っぱく言われることだと思いますが、自社養成は『期』単位で『あの期は優秀だなぁ』とか、いまいちだなぁとか言われます。
事実、勉強会がしっかりと機能している期ははたから見ても分かります。
失敗をちゃんと一人一人が共有してみんなで対策を考えているかとか、進度が遅れている者をみんなで助けられているかなど。
期の中でも優秀な人、出来の悪い人がいるものですが、全員でチェックアウトすることが目標で、誰かがフェイルしてしまうのは同期全員の責任です。
今まではいかにライバルよりも優秀な成績を残すか、という世界だったと思いますが、パイロットの訓練は全く異質なものです。
仲良しクラブになる必要はありませんが、それを肝に命じておくといいと思います。
次に自動操縦について。
これは難しいですねー。僕もAIに職を奪われてしまうことは危惧しています。
エアバスが完全自動操縦の旅客機を開発しているという話は僕も聞いたことがあります。
それがどれくらいの段階にあるのかは分かりませんが、米軍では遠隔操作の爆撃機が実用化されているし、AIによる自動操縦も、技術としてはすでにあるものです。
今のオートパイロットも充分優秀ですが、実際のところはパイロットがパネルにターゲットとなる高度や速度を入力して、それを自動操縦が守る、というものに限定されていて、AIが意思決定をするというレベルとは程遠いものです。
というもの、混雑した空域では飛行機が輻輳していて、管制官の指示によりぶつからないように高度やヘディングの指示を受けて、パイロットはそれを守らなければなりません。その中で積乱雲などを避けるためにそれぞれのパイロットが必要なヘディングや高度を要求したりして、それをまた管制官が全体の流れとすり合わせて、という風にやっています。
つまり、旅客機のレベルでAIによる完全自動操縦を実現するには、管制官の意のままに動くシステムを作らなければいけない訳だし、そうすると管制機関とのインターフェイスが必要になってきますね。これを世界中の空港で実装するのは結構時間がかかりそうな気がします。
またATCと上空の全ての飛行機が繋がって、一つの意思の元に自動制御されていれば、非常に効率的な運航ができそうではありますが、ちょっとSFじみてきましたね。実際にそんな計画があるとは聞いたことがありません。
つまり、航空機メーカーが単独で完全自動操縦の旅客機を作ってもそれだけでは全然足りなくて、インフラとしての飛行機産業として考えなければ実現できないと思います。
事故が起きた時の責任関係も根深い問題になりそうですよね。
そう考えると、あくまで僕個人的な意見ですがAIによる完全自動操縦の旅客機が日本の、世界の空の主流になるにはまだまだ長い時間がかかりそうな気がします。
以上、参考程度にしてください。また君の意見があれば教えてください。