積乱雲の怖さ

夏だね。

夏といえば夏休み。海、山、花火、夏祭りとかいろんな楽しみがあって僕も好きなんだけど、積乱雲って言葉を聞いたことがあるかな?

入道雲って言われることもあるんだけど、もくもくと垂直に発達した雲のことだ。

積乱雲

この雲が出てくると『あー夏だなー』って僕は思うんだけど、雄大だし見てて気持ちいいよね。
まんまだけど、雄大積雲って言われたりもする。

雲って、航空の世界じゃ大きく分けて2種類あって、『積雲』と『層雲』に分かれているんだ。

いい名付け方をしたと思うけど、上に積み上がっていくような形の雲を積雲形の雲と言い、水平に層のように広がる雲を層雲形の雲と言う。

層雲

積雲形と層雲形の雲で、さらに発達度合いや高度によって呼び方が変わるんだけど、積雲形の雲の最も発達した形が積乱雲となる。

積乱雲が発達する理由や条件はいろいろあるんだけと、ざっくりと言うと、
①暖かくて湿った空気が
②垂直に持ち上げられる
とこの積乱雲が発達する。

昔理科の授業で習ったと思うんだけど、夏は日本列島を暖かく湿った気団である、小笠原気団が覆うので、1つ目の条件、暖かくて湿った空気は常に満たされてる。

2つ目の条件、垂直に持ち上げられるっていうのは例えば低気圧がやってきたり、それに伴う前線だったり、強い日射により地面が暖めてられて、それに触れて暖かくなり膨張した空気が持ち上げられて局地的な積乱雲ができる。
これが俗に言う『夕立』だ。
東南アジアではこれによって毎日同じ時間にスコールが降ったりする。

前置きが長くなったけど、この積乱雲がパイロットにとっては脅威となる。

『積乱雲には全ての悪天が含まれている』なんて冗談みたいな言葉があるんだけど、ほんとそうなんだ。

雷、ひょう、乱気流、着氷、ウインドシアー

どれも積乱雲の中で発生して、でかいのに当たると一発でアウトになる。

だから航路上に積乱雲があると、パイロットは絶対に避ける。
特に巡航高度でよく飛ぶ40000ftとかまで発達している積乱雲は最大級にでかいので、避けて飛ぶ。

エンルートではそうやって避けられるからまあ忙しくはなるけど大したことはないんだけど、この積乱雲が目的地の空港の真上やアプローチコース上にある場合には難しいことになる。

上で積乱雲に伴う危険に
雷、ひょう、乱気流、着氷、ウインドシアー

を挙げたけど、離着陸時にどれが一番怖いか分かるかな?
まあどれも怖いんだけど、一番と言えばウインドシアーだと思う。

ウインドシアーとは風が急激に変わってしまう現象なんだけど、離着陸時の高度と速度の低いところでこれに遭遇すると飛行機はストールを起こしてしまったり、急激に高度を失って墜落する可能性がある。

実際に、ウインドシアーにより飛行機が墜落してしまった事故が世界中で起こっているんだ。

だからパイロットは空港の真上に発達した積乱雲がある時には、待てる余裕があるならば待つ。
上空でホールディングを行うんだけど、雲は風と共に動いていくので、でかい積乱雲も15分〜30分くらい待てば空港から離れていく。少なくともアプローチコース上から外れてくれれば着陸できるチャンスがある。

でも辛いはその余裕がない時。
積乱雲のような局地的な天気現象って、現在の科学じゃ正確にピンポイントで予測することができないんだ。

だからプランの時点では『全くの好天』だったはずが、ちょうど到着時間に積乱雲が真上にありました、なんてことが起こる。

そんな時にはホールディングするための燃料をもっていないので、泣く泣く他の空港にダイバートということになる。
夏の飛行機のオペレーションは積乱雲、梅雨、台風となかなか曲者揃いで、難しいんだ。