パイロットと出世
今日はパイロットと出世について話してみよう。
読んだところでだから何だって話でもあるので、暇つぶし程度に読んでみてほしい。
パイロット独特の特殊な事情があるんだ。
このブログを読んでくれている人達は、今のところはあんまり出世とか気にしてないんじゃないかな?
当時の僕もそうだったけど、『パイロットになることが一番』その後の事なんてかまってられるかってのが本音だと思う。
やっとの事でパイロットへの門を開くと、すぐに厳しい訓練が始まる。
訓練中も『機長になることを前提にやってもらうからな』と言われると思うけど、『まだ副操縦士にもなってないのにそんなこと言われても知らんがな。』って感じだよ。
副操縦士を10年前後やったら、次は機長昇格訓練。
これもきつい。なまじ歳をとってるから、勉強しても頭に入ってこないしね。
でもこんなこと言っちゃあれだけど、なんだかんだで9割の人はそのまま機長に上がる。
ここでやっと出世がどうのこうのって話になってくるんだけど、実はパイロットって、出世してもそんなに美味しくないんだ。
パイロットにとって出世と言えばいくつか道があって、一つは査察操縦士。これはパイロットの審査を行うことができる資格で、パイロットにとっては最上位の資格になる。チェッカーと呼ばれる人達だ。
大手やそれに準ずる航空会社は基本的に年に二回の定期審査は社内のチェッカーが審査を行う。
でも、査察操縦士自身のチェックは航空局から審査官がやってきて、厳しくチェックされる。
それだけ、勉強しないといけないし資格を失うリスクも高いし、おまけに自分がチェッカーとして審査をするときには基準に満たないパイロットを不合格にしないといけない、憎まれ仕事も引き受けないといけない。
やりたいかな?
やりたくないよね。でも当然給料が上がるから、やりたがる人はいる。
やりたくはないけど、君にならと会社に指名されてやる人もいる。
パイロットにとって他の出世の道は乗員部長とか、そういう役職だ。
これはパイロットとしての資格とは関係なく、これも会社に指名されてやることになる。
これももちろん名誉なことなんだけど、部長として管理の仕事をするってことはその分フライトが減るってことだ。
普通はパイロットはだいたい月に15日〜20日フライトをするんだけど、部長とかになると『今月は5日しかフライトがないよ…』なんてこともある。
もっと少ないこともあるだろう。
フライトが少なくても、給料は保証される。
『最低保証時間』ってものがあって、飛ばなくても、70時間飛んだ分の給料は保証しますとか、そんな風に決まってる。
でもだからいいじゃんってこともなくて、そういう管理の仕事をやりたい人はいいんだろうけど、そもそもパイロットになる人は強い意志が選んでパイロットになっているわけで、その仕事を減らしてまで管理の仕事をしたい、と思う人は少ない。
おまけに、部長といえどもパイロットとしての技量が不足すれば上のチェッカーに審査で落とされてしまうんだから、自分の技量維持もしなけりゃならない。月5日に満たないフライトで。
やりたいかな?
これも微妙なとこなんだよな。
会社に認められて出世するんならそりゃ嬉しいんだけど、あえてそれを断る人も多い。
ちょっと不思議な世界だと思う。
でも逆に、社会人としてそれはいいことでもあると思う。
出世競争に心をすり減らさなくて済むからな。この仕事はきついこともたくさんあるけど、人間関係やこの辺を含めて、快適でもあると思う。