パイロットの2030年問題を考えてみる

パイロットの2030年問題

聞いたことがある人も多いと思うんだけど、簡単に説明するとLCCや機材の小型化のトレンドで運航される飛行機が増えていく中で、日本においては団塊の世代、段階ベビーの大量退職も合わさってパイロットが足りなくなってしまう、という問題だ。

これは国土交通省がちゃんとした調査のもとに発表されたもので、国をあげてその改善に取り組まれている。

まずはこの資料を見てみて欲しい。

我が国における乗員等に係る現状・課題:航空局

まずびっくりするんだけど、これって10年前くらいに出された資料なんだよな。
古いけどすごくよくできていて、将来のパイロットの需要予測はもちろん、大手航空会社とLCCのパイロットの年齢構成なんかもまとめられている。

パイロットの需要予測引用:国土交通省

これによると2030年には年間400人のパイロットを採用していかなければ対応できないこと、LCCは大手に比べ高齢のパイロットの割合が高いことがわかる。

パイロットの年齢グラフ

引用:国土交通省

これは大手を退職したパイロットがLCCに転職しているケースが多いからだと思う。

実際の僕の肌感覚で見ても、大手はまだパイロット不足という感じはしないけど、LCCのパイロットは「スケジュールがキツすぎる」と言っている人が多い。
そもそもLCCはパイロットの稼働を高めて高利益を追求する構造になっているので当然の結果ではあるんだけど、このまま2030年に入っていって一番ダメージを受けるのがLCCであることは明白だと思う。それに比べて大手はさすが、計画的にパイロットの確保を行なっているなぁと感心してしまう。

話を戻そう。10年前のこの問題提起から、現状はどうなっているのか?
またコロナによる影響はあったのか?
国はこの問題を受けてMPLというパイロットの訓練の効率化や私大のパイロットコースの開設を進めた。またパイロットの定年の引き上げも行なった。

結果正確なところは僕には分からないということになるんだけど、ざっくりと考えていきたい。ほんとは機長と副操縦士を分けて考えるべきなんだけど、難しくなるのでパイロットで一括りにしてしまう。

まず、コロナによる影響はあったのかというところ。

これは短期的にはあったと言える。
大手航空会社を含めて新規のパイロットの採用を止めたし、それにより航空大からも私大からもエアラインに就職できない人が出てきてしまった。

『この状態がいつまで続くの?』と思った時期もあったけど、現在なんとかコロナの出口が見えてきた。(あくまでも航空業界の回復という見方で)

残念ながら潰れてしまったLCCもあったけど(エアアジアジャパン)、新たに生まれたLCC(ZIPAIR)もある。ZIPに関しては今後も成長していくだろうと見える。

またそもそもコロナがこの10年前に行われた需要予測を減らしたのかというと、大勢には影響ないんじゃないかと思っている。
テレワークの浸透により企業の無駄な(?)海外出張は減ったかもしれないが。
この辺の影響はこの先数年でどうなるのか注視すべきだと思う。

じゃあ上の資料で出ていた2030年までに年間400人のパイロットを作らないといけないというのが有効として、現在地がどうなっているのか考えてみよう。

パイロットへのソースとして、現状大きいのが自社養成、航空大学校、私大のパイロットコースになっている。この数をざっくりと数えてみよう。

JALが前回の自社養成の募集人数を公開していて、80人になっている。ANAは未定になっているけど、同じくらいとして80人。他にピーチやスカイマークも自社養成をやったりやらなかったりしているが、20人くらいと決めてしまおう。足して180人

次に航空大。大幅な定員増加で、前回は100人程度の定員になっている。

最後に私大。これもたくさんあるので正確な数字じゃないんだけど、崇城大学桜美林は20名と書いていて、東海は分からなかった。あと法政大学もある。ざっくりとみんな20人程度として、もっと小規模でやっている大学もあるだろうと想定して、20×5の100人程度は確保できるのかな?

全部足して380。これにフライトスクールと自衛隊からの転職組が入ってくるので、なんとなく年間400人のパイロットが生まれそうだ。現状が維持できれば。

あれ、足りちゃう?予想に反してしまった。いい仕事してるな、航空局。

ネットニュースでは『パイロットが足りなくなる!』って記事がたくさん転がっているので、そうなると僕らは売り手市場になって給料上がるんじゃね?って気持ちよくなっていたんだけど、そうでもないのかもしれない。

どこかに間違いがあるのかな?と思ってさらに考えてみたんだけど、この図をもう一度みてほしい。

パイロットの年齢グラフ

引用:国土交通省

当たり前だけど、年齢が高い方が機長の割合が高くなっていて、若いほど副操縦士が多い。
最初の『機長と副操縦士を一緒に考える』というところに無理があったのかもしれないんだけど、大量退職していくのはほとんどが機長ということになるので、足りなくなるのは機長であり、問題の本質はパイロット(副操縦士)の養成もだけど、各社の機長昇格制度の拡充が急務なんじゃないかと思う。

つまり、年間400人のパイロットの卵を育てて、同時に年間400人の副操縦士を機長に昇格させないといけない。ということにならないか。

パイロットの総数としてはどうやら足りそうだ。じゃあ各社の機長昇格はどうなっているのか?
長くなったので続きはまた後日。