パイロットと四季

ずーっと暑い日が続いていたかと思えば、昨日から急に寒くなったな。
秋雨前線による豪雨が続いている地域もあって、何だか年々自然の脅威が増しているような気さえする。

今日はパイロットと四季についての話をしようと思う。

パイロットほど季節を感じられる仕事は少ないと思う。
なぜならウェザー、天気は季節によって変わり、飛行機の運航にとって脅威になるからだ。

ところで、なんで季節が巡るか知っているかな?
それは日本の周辺の『気団』というものが大きく関係するんだけど、これは実は中学校でみんな習っているはずだ。

夏は南にある温暖湿潤な小笠原気団が日本上空にまで勢力を伸ばしてくるので、蒸し暑い日が続く。

パイロットにとって脅威になるものを『スレッド』って言うんだけど、夏のスレッドは積乱雲と台風が代表的なものになる。
熱くて湿った空気は、熱射などで暖められて、暖まった空気は周りの空気に比べて軽いので上空へ持ち上げられる。
上空の方が温度が低いから、持ち上げられた空気は急速に冷やされて水滴になり、雲を発生させる。
ざっくりというと、これが積乱雲の成因の一つだ。

積乱雲の中は雷や雹、乱気流などさまざまな悪天が存在するので、普通パイロットはこの積乱雲が予定されるコース上にある場合、避けながら飛行を続けることになる。

面倒だけど、避けられる限りは危なくはない。
危ないのは、この積乱雲が目的地や出発地の空港の真上に来てしまったり、アプローチコース上に来てしまって避けられない場合だ。

こういう時はホールドをして通り過ぎるのを待つこともあるし、そこまで大きなものでないなら大きく揺れることになるが入ることもある。
積んでいる燃料は限られているから、目的地の変更もあり得るし、夏のオペレーションはこれが大変なんだ。

一方で日本の冬は北にあるシベリア気団が日本周辺にまで勢力を伸ばす。
シベリア気団自体は乾燥しているんだけど、日本海を渡ってくる時に水分を海からもらって、その湿った空気が日本アルプスにぶつかるので日本海側は大雪になりやすい。

雪の中のオペレーションは視程が悪くなるので離着陸時に滑走路が見えないと離着陸ができなくなるし、滑走路やタクシーウェイの除雪で離着陸が一時間待ち、なんてこともザラに起こる。
そうなるとそんな燃料を持っていない飛行機は他の飛行場にダイバート、ということになる。

また雪の積もった滑走路に降りるのは滑ってしまうと滑走路内で止まれなくなる危険があるし、雪が飛行機に積もった状態で離陸することは基本的には禁止されている。

翼などに積もった雪は、翼の空気に対する形状を変えてしまうので、飛行機の性能が落ちてしまうためだ。
だから離陸前にアンチアイシングといって、飛行機に雪が積もらないようにする薬剤を振りかけるんだけど、これには有効時間が決まっていて、アンチアイスから1時間以内とかに離陸をしないといけない、みたいに決まってる。

でもこういう日って他の離陸待ちの飛行機で順番待ちになっているし、ほんとに気を遣って大変なんだよ。

春と秋は比較的パイロットにとってオペレーションは楽なんだけど、その境目には梅雨前線と秋雨前線が発生する。
さらに朝晩に霧が出やすくなる。

どれもこれも、パイロットにとっては判断を誤ると致命的だ。

だから四季に対する知識はパイロットにはほんとに重要で、試験でも当然聞かれる。

上から見える景色はいいだけどな。冬の雪景色も、夏の緑も、秋の紅葉も絶景だ。

四季とともにある、面白い仕事だと思う。