パイロットの世界での鉄則
パイロットの世界では、『反省はエンジンを止めてから』が鉄則だ。
何度もいってるけど、人間は空を飛べるようにはできていない。
だから、身体中の感覚と知識と経験をフル活用して飛行機を操縦してる。
例えば君がコーパイになった時、常にキャプテンは先生だ。君がI haveしてる時も、常にキャプテンは見張っていて、危険だと感じたらすぐにコントロールをとられる。
でも、ほとんどの場合その場では何も教えてくれない。
例え君がミスをしたとしても、その場で追求されることはないだろう。
かといって安心してはいけない。
飛行機が駐機場に止まって、エンジンを切った瞬間にぶん殴られるかもしれないから気をつけろ。
これは別に飛行機に限ったことじゃないと思うが、特に僕らの間では常識だよ。
考えてもみてほしい、君が陸上部だとしよう。走っている最中に監督が
横からフォームはこうだ!とか言って怒鳴ったって、すぐに直せるわけないよな?それと近い。
1つ僕が経験した面白い話をしよう。(興味深いという意味でだが。)
僕が基礎訓練をしていたころの話だ。
その日はいつも使っていた訓練用の滑走路が工事のため使用不可になっていたんだけど、ある教官と訓練生のペアがそれを知らずにクローズした滑走路から離陸して訓練に出かけてしまった。
工事道具などは置いてなかったから大事には至らなかったけど、これは大変なインシデントだ。
しかし当事者の2人はそんなこともつゆ知らずに訓練をしていた。
オペレーションルームという、フライトを管理している部屋がある。そこからは飛んでいる飛行機にも無線で連絡することができるのだが、ちょうど僕はそこでインシデントについて知った。
しかし、オペレーションルームの管理人はそのパイロットにインシデントについて知らせようとしない。僕は不思議に思って、インシデントを知らせて早く帰ってこいと伝えた方がいいんじゃないのか?と尋ねた。
するとオペレーターはにやりと笑って、『降りてきてから知らせるんだよ』と言った。
それで僕はなるほどな、と思ったんだけど、君にはその理由がわかるかな?
想像してくれ。重大なミスを犯した人に、『何やってんだ馬鹿野郎!早く帰ってこい!!』なんて言ったら、彼は自分の能力の100%を出せなくなってしまうだろう。
帰ってくるにはフライトのクライマックスである着陸が待ってる。
動転したパイロットが着陸をミスしてしまったら?
そんなところまで回り込んで、パイロットの世界ではルールが決められている。むしろ、僕たちは人の能力を過大評価しないと言ったほうがいいのかな。
覚えておいてほしい。