パイロットの勉強法

もう20年近くこの業界に身を置いているんだけど、パイロットを取り巻く環境は大きく変わってきているなと感じる。昔は自社養成か航大かしかなく同じような人間が集まっていたんだけど、今はソースも色々だし、性格や考え方も色々だし、能力も高い人から低い人まで幅広いし、努力もする人としない人の差が10年前と比べてとても広がっている。

人によって違いがあるのは当たり前だしむしろいいことなんだけど、パイロットとしての能力で差が大きいのは好ましくない。
訓練では副操縦士になれる最低のラインが引かれていて、これをクリアした後に会社から提供される知識や訓練は最低限のものになる。

自分から情報を取りに行ったり、課題を見つけて勉強を進めていける人はその後機長昇格にすんなり進めるんだけど、それができない人は機長昇格に進めない。

ここの部分を勘違いしてる人が意外に多いので知っておいてほしいんだど、アダルトラーニングという言葉を知っているかな?エロの話じゃないぞ。

小学校から大学までの教育機関では知識の付与型、『先生から生徒へ教えてあげるタイプ』の教育が行われていて、学ぶことが目的になっている。

一方で社会人になった後のお勉強はこれと一緒ではなくて、『自発的に学んでいくタイプ』の学習で、勉強することが目的ではなく『課題を解決すること』が目的となる。
パイロットで言えば、副操縦士になることとか、その先の機長になること。さらには安全なパイロットになること。

アダルトラーニングでは子供向けの教育と効果的な学習法も違っていて、ディスカッション形式、課題解決型、テーマも即使えるような実践的なものになる。その違いをchatGPTに書いてもらうとこうなった。

パイロットの世界では昔からこれが行われていて、同期で月一くらいで集まって、最近経験した事象について共有、ディスカッションする。というのが当たり前に行われてきた。僕も同期とこれをやってきた。もちろんお金なんか出ないが、こうやって勉強するのが効率がいいことを知っているのでわざわざ集まる場所を探して時間をかけてそこまでみんなで集まって、勉強会をする。

最近の副操縦士の話を聞くと、同期で集まって勉強会とかはやらないという話も聞く。ここは期によって差が大きくて、てんでバラバラで情報共有が全然されてない期もあれば、定期的に勉強会をしていて、期の中の誰かに何か言えばすぐに全員に共有される期もある。
最終的にパイロットとしての能力が高くなるのは火を見るよりも明らかだろう。

このように子供向けの教育とアダルトラーニングでは明確な違いがあることを知って欲しい。

これをやってこなかった人が機長昇格の直前になってうまくいかず、『会社から十分な教育環境が与えられてないのに知識や能力不足って言われても困る!』なんて言い出したりするんだけど、『いやいやここは学校じゃないんだよ。』という絶望的なすれ違いになってしまう。

これは概念自体を知らないと取り返しがつかなくなるから怖い。
副操縦士の10年の間アダルトラーニングを継続してやってきた人と、会社から提供される最低限の学習だけをやってきた人とでは、それだけの差ができていて、10年後に不足に気がついてももう遅い。まるまる10年分遅れている…とは言わないが、半分の5年の追加で埋められればいい方かもしれない。

これから副操縦士になる人は心に留めといてほしい。