ひとの命を預かるということについて質問です。

ひとの命を預かるということについて
ブログ、いつも楽しく拝見させていただいております。自社養成パイロットを受験しております、雛鳥パイロットと申します。
高校2年にパイロットを目指す事を決心しこのブログに出会い、はや5年。現在は大学四年生として、自社養成パイロットを受験中であります。
パイロットという仕事、自身を見つめるにあたり大変多くの気づきを得ております。本当にありがとうございます。
今回質問させていただきたい事は、人の命を預かる。という事についてです。
現在、自社養成パイロットを受ける中で何度も志望動機を見直し、大学の専門講師の方に添削していただいているのですがその度に「志望動機の自己都合が強い。企業は利益を出せる人が欲しい、そして中二病のようなこの志望動機を書く人に人の命を預けられない」と言われております。言われた当初は思いが届けば良いのではないか、と考えていたのですが、先日飛行機を乗った際に自身の甘さを実感しました。
その飛行機はやや悪天候の中空港を離陸したのですが、目的地の空港が着陸出来る天候条件を下回っていた為、30分ほど上空で旋回しておりました。その間、周りは霧のように白い雲に囲われ周りは何も見えませんでした。
パイロットを目指す私はその状況を自分に置き換えた時にゾッとして、非常事態が起きたら俺ならなんとか出来るさ!と、軽々しく考えていた過去の自分を殴りたくなり、その責任の重さと恐怖に涙が出ました。
加えて飛行機が無事着陸しても拍手はなく、足早に去る乗客の姿だけでした。
賞賛を得たい為にパイロットになったのではないにしろ、そのような状況もある中、後ろには何百という人の命を預かるパイロットが、その責任の重さを考える時に出来ることは、心の持ちようはどのようにしているのでしょうか。
大変長くなってしまい申し訳ありません。私自身、そのような責任がある。と考えてもパイロットになりたいと言い切る事が出来ます。
ですが、その為に出来る事、どう向き合うかと聞かれては答えが出ないのです。
もし意見を頂き、自身の答えを見つける参考になればと思います。
By 雛鳥パイロットさん
回答
雛鳥パイロットさん、ご質問ありがとうございます。
いい経験をしましたね、まさにそこがパイロットの存在意義なのだと思います。
責任って難しい言葉だと思います。例えば、今の時点で「君にその責任がとれますか。」「はいとれます」って言ったって、なんの説得力もないですよね。例えそれは君がスーパーマンみたいに頭がよくて、人柄がよくってもです。
人の命を預かる責任に応えるためには、知識、モラル、操縦の能力、マネジメント、コミュニケーション能力など、たくさんのスキルが必要です。
もちろん、モチベーションとして君が持っているような熱意は必要です。自分をコントロールするためにも、ある程度の自信も必要でしょう。
しかし、現に君が経験したような状況では、パイロットは目的地や他の空港の気象を考えて、カンパニーと連絡して、その地上でのお客さんのハンドリングが可能かなんてこともあるし、じゃあ燃料を考えて何分間は目的地上空で空中待機できるねって考えます。その間に飛行機の速度や高度なんかもモニターしてなきゃいけない。機長が全て独り、自分の頭の中で考えていて副操縦士を置き去りにしては全体としてよいパフォーマンスが出ないし、それをうまく伝えることも必要です。
またモラルとも言いましたが、目的地に降りたい一心で、航空法で決められた基準外の気象状況で進入を継続してはいけません。これはやろうと思えばできてしまいます。
航空会社の規定は安全を守るように設定されていて、航空局の厳しい審査の上に成り立っています。そのため規定は厳しめに作られていますが、規定を守るという心は非常に大事です。
じゃあそれだけでいいのかって話でもなくて、お客さんのことも考えなければなりません。
それが夜の最終便だったとして、もう終電もない、ホテルもないってところに降ろされては例え安全が守られていたってイヤだし、まあ考えなくちゃいけないことはたくさんあります。
だから、パイロットは勉強しなくてはなりません。
僕もそうでしたが、君も今は自社養成試験に通ることが目標だと思います。
しかし、試験通過は入り口です。そこから苦しい日々が始まります。もちろんそれ以上に楽しいことがたくさんありますが。
責任とれますって口で言うことは簡単です。でも、重たい責任にちゃんと応えるためには、ずーっと勉強し続けなければならないし、それができる人のみがパイロットになるべきなのだと思います。
なんだかとりとめのない話になってしまい、質問に答えられたか定かではありませんが、僕はそう思っています。以上、頑張って下さい。