訓練中のフェイルについての質問まとめ
これは質問としてはそんなに多くはないんだけど、パイロットを目指す上でのリスクとして避けては通れないところだし、訓練生として選ばれてから気になってくるところだと思うのでまとめておきます。
訓練中のフェイルについて。
やっとのことでパイロット候補生として航空会社に入社、航空大学などに入れても、健康上の問題や訓練の進捗が悪く、フェイル(訓練中止)となってしまうことがあります。
これは当人にとっては本当に厳しいものです。
僕も実際にフェイルとなった先輩、同期、後輩を見てきましたが、強烈な思い出です。
同期みんなで帰国の準備、大量の教科書を捨てたりする作業や持ち物の整理を手伝って、前日にみんなでお別れ会をして、誰かが泣き始めたのを皮切りにみんな泣き出して、翌日のバスに乗って行くのを見送って、でも自分の訓練があるからすぐにまた勉強を始めて、と今思うとほんとにめちゃくちゃだよなと思います。
それでも、自分のミス一つで多くの人が巻き込まれて死んでしまう可能性があるこの仕事では、これは仕方のないシステムであると僕は思います。
そんな中どんな理由でのフェイルが多いのか、考えてみます。
まず、意外かもしれませんが、健康上の理由です。
入社前に身体検査をして合格しているのに、とも思いますが、意外と多いです。
精神的なものも多いのかなと思います。
訓練中、プレッシャーで鬱になってしまってフェイルした人もいるし、ストレスで発生する病気になってしまった例もあります。他にも極度の緊張やストレスで意識が飛んでしまうという例もパイロットとしては致命的になります。こういうのは入社前の健康診断ではでてきづらいのかもしれません。
訓練の進捗上フェイルの理由としては下の回答にも書いていますが、まずはファーストソロに出れるかどうかが最初の関門になると思います。
これは大いに適正の問題なのかなと僕は思います。
トラフィックパターンといって、空港の周りをぐるっと一周。離陸からターンしながらレベルオフしてダウンウィンドを飛び、ベースターンをしながら着陸へ向けて降下を始め、パスを判定しながらファイナルターン、着陸と、これは基本のパターンでありながら、非常に難しい訓練です。
ビジュアルアプローチといって、実際の運航でもこれに似た経路で着陸する方式がとられている空港がありますが、経験十分なプロでもたまに失敗してゴーアラウンドしています。
これを『1人で出ていってもちゃんと帰ってこれるな』と教官に思ってもらえないとファーストソロに出してもらえません。適当にオッケーを出して事故を起こしてしまったら大変です。上手い下手もありますが、落ち着いてしっかりとやることをやり、ある程度の状況にも適応できると認めてもらわなければなりません。飛行機に初めて乗って、1ヶ月やそこらでこのレベルに到達しないといけないので、これは大きなハードルだと思います。
それでも多くの訓練生は一生懸命イメージフライトをしてこれができるようになるのですが、1割程度の人はそうはなりません。これは適正なのかなと思います。
特に、一点集中して周りが見えなくなってしまうタイプの人はまずいのですが、それも程度によるし、一層の努力によって克服も可能だと思います。しかし、訓練では短期間の間にこれができるようにならなければならないので、ファーストソロに出る前に与えられた訓練時間(航空大学や自社養成ではこれが決められています。)を使い切ってしまい、フェイルというケースが多くあります。
ファーストソロがクリアーできれば、あとは努力と、やはり運や環境もあると思います。
何か科目などで躓いてしまった時に、教官や同期に助けてもらえて踏ん張ることができるか、これが大きいのかなとも思います。
他にも具体的な質問があれば追加していくので、遠慮なく質問してください。
最後に、フェイルは辛いですが、恥ずかしいことではありません。
それで努力を怠らなければ、自分に逃げ道を作ってもいいと思います。仕事はたかだか仕事だし、命をかけるほどのものではありません。
精神的に参ってしまっては一番もったいないので、気楽に、図太くやっていくのがいいと思います。
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