管制官という仕事
これはみんな知っているよな?
管制塔で空港に入ってくる飛行機をキレイに順番に並べる仕事だ。
実はパイロットに対する管制官の指示は、航空法的には『国土交通大臣』の指示と同じで原則パイロットはそれに従わなければならない。
管制官の仕事にもいろいろあって、空港の敷地内の管制塔にいる管制官もいれば、空港じゃなくて航空路を飛んでる飛行機に対して管制を行う管制官もいる。
また空港の管制塔の中でも管制官の仕事は多伎に渡る。
普通、管制塔の中では『グランド』『デリバリー』『タワー』の3つの部門に分かれていて、それぞれの仕事を、それぞれの管制官が行う。
また飛行機と通信する無線周波数もこの3つで分かれていることが多い。
『グランド』は、空港内を地上走行する飛行機に対して許可や指示を行う。
例え飛んでないにしても、何しろ飛行機は巨大だ。せまい所に一度に飛行機が通ろうとしても無理だし、翼端なんかをぶつけちゃったら大変だ。
さらに、悪天候時のことを考えてほしい。霧なんかが出ていたら、前が見えない。
以前離陸する飛行機が使用滑走路を間違えるなんて事故があった。
1983年にアンカレジであった事故で、大韓航空の貨物機と、エアーセントラルのコミュータが地上で衝突し、両機とも大破した。死者こそでなかったが、多くの人が怪我をした。
この事故は言葉じゃ説明が難しいので、図で描いてみよう。
まず、これがアンカレジ空港のチャートだ。全然正確じゃないが。
そして、事故当時の両機の配置がこうだ。
大韓航空機は、ランウェイ32から離陸を行うはずだった。
しかし霧の中、大韓航空機は周りの景色が全く見えず、こんな経路をとってしまった。
そして、間違った滑走路にはいる。
最悪なことに、滑走路の反対側ではエアーセントラル機が離陸待機をしていた。
そして、本来であれば航空会社のマニュアルで、機上の方位磁石を滑走路の方向と一致しているかを確認するべきであったが、それを怠ったのであろう。そのまま離陸滑走を始めてしまった。
この事故は僕達にも多くの教訓を残してくれた。
地上滑走に孕んでいる危険性、チェーンオブイベント、滑走路確認の重要性など。
これについてはいつか解説しよう。
次に『デリバリー』は管制許可を与える管制業務だ。
小さい空港では他の周波数と兼務していることも多いけど、飛行機にはフライトプランってものがある。(参考:フライトプラン)
この計画の承認や、また変更がある場合は変更点をパイロットに与える仕事だ。
最後に『タワー』っていうのは普通みんながイメージするような管制の仕事で、飛んで来た飛行機に対して着陸の許可を与えたり、空港が混んでいたら待機を命じたりする。
実はこの管制官とのやりとりがやっかいで、混んでる空港ではこの通信をするのにも一苦労する。
基本的に、無線通信というのは一度に一つしか受けれない。管制官がしゃべっていたり、他の飛行機のパイロットがしゃべってたりすると、自分はその通信が終わるのを待たなきゃいけないんだ。
だから、混んでいる時なんかは、ひっきりなしに誰かがしゃべっていて、自分はなかなかそこに入れない。
『今だ』って思ってしゃべっても、それが他の通信とかぶっていて送信されてなかったりする。
とまあこういう仕事なんだけど、パイロットにとってこの管制官との通信ってとても大切なんだ。
管制官の許可がなかったら、滑走路におりちゃいけないし、何より管制官がその空港に集まる飛行機を全て把握して、順番にコントロールしているんだから、その管制官の意図に反することをすると、他の飛行機と衝突する危険がある。
またまさに『言葉』だけのコミュニケーションだから、誤解なんてことも起こり得る。英語だしな。
それで管制用語なんかも細かく決まっているし、管制ルールが決まっていて、パイロットと管制官との間で背景知識をあらかじめ共有しておくんだ。
進入する飛行機においては、高度が低い方が優先とかね。
実はこの管制、市販のエアバンドと呼ばれる無線機があれば、聞けるんだ。
航空担当のマスコミなんかは常にこれを聴いてるから、僕らも迂闊なことは言えないんだけど。
そんなに高いものでもないから、一度聴いてみてはどうだろうか。