雪の恐怖
だんだん暖かくなってきて、今日は久しぶりにコートなしで外に出かけてみました。
ちょっと遅いという感は否めないのだけれど、完全に時期を逸してしまう前に雪について話してみようと思う。
雪による事故やインシデントっていうのは世界中で起こっていて、代表的なのは1982年にアメリカ、ワシントンで起こってしまった墜落事故(出典:wikipedia)で、着氷により離陸直後に失速(ストールという現象)をしてしまい、低高度であるがためにそこから回復することができず、墜落してしまった。
パイロットの初期訓練でもこの事例については学ぶと思うけど、着氷というのは飛行機の胴体や翼に氷がついてしまう現象で、着氷が起こると抵抗が増えて、揚力が減少して、失速速度が増加してしまう。
飛行機にとって非常に不利な状態になってしまうんだけど、離陸時って意外と失速から速度が近くって、機体にもよるんだけど20ktくらいしか余裕がなかったりする。
だからこそこのスピードを切らないようにパイロットは細心の注意を払って操縦するし、チェックでこの速度を切ってしまったら一発でフェイルするくらい厳しくなってる。
じゃあこれらのことから雪の中のフライトは危ないのかというと決してそんなことはなくって、こういった事故からいろんな決まり事ができたり、ボーイングの改修が行われていて、現代では機体が着氷したまま離陸を行うことはあり得ない。
常に危険性を意識しなければならないのはオーバーランだ。
オーバーランっていうのはその名の通り、滑走路上で飛行機が止まれなかったことを言うんだけど、オーバーラン自体は事故ではなく、航空法の定義では重大インシデントに分類されている。
とはいえ危険なことには変わりないんだけど、このオーバーランは現代でも起こってしまっている。
最近の事例もあるので具体的な事例を出すのは避けるけど、これは他人事ではなくって、『自分も明日のフライトでやるかもしれない』という危機意識を持つことが重要で、ほんと紙一重でこういうことが起こってしまったりするんだ。
例えば着陸の時のフレアー、気流が悪かったりすると難しいんだけど、普段ならちょっと接地点が伸びたところで全然余裕で滑走路内で止まることができる。
ちゃんとしたパイロットは『ほんとに?じゃあどこまでに接地すれば止まれて、どこを越えるとオーバーランするの?』っていうのを自分で計算して、頭の中のバックアップとして持っているもんなんだけど、例えば吹雪みたいに風が強い上に大雪が降っていたりすると、めちゃくちゃ気流が悪い中アプローチして、滑走路の手前ギリギリでアプローチライトが見えて着陸の決断、フレアー。絶対にフレアーが伸びないように接地させないといけない。
こうなってくるとかなり難しいんだよね。
しかも空港から通報されている滑走路状態よりも実際のブレーキングアクションは悪いかもしれない。
こういういろんな不運が重なってオーバーランが起こってしまうんだ。
今期は雪が多かったので僕もドキドキしながら着陸したのが何度かあるけど、ビビりな性格なもんだから上手く接地できても、その後必要以上にブレーキを強く踏んで、普段よりも短い距離で止まっちゃう…なんてことになったりするんだけど、まあそれでいいんだよね。
今年は日本では雪による事故やインシデントの話は聞かなかったけど、現場は結構キツい仕事をしてるんだと知ってもらえたらと思います。
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません