Attitude flight
前回の続きだ。プロのパイロットが徹底的に教えこまれるAttitude flightについて説明しよう。
Attitude flightの基本は、
Pitch + Power = Performance
として公式にされる。
Pitchってのはいいよな?(参考:飛行機の動き、自由度)
Powerっていうのはエンジンのパワーセッティングのことだ。
そして、このPerformanceっていうのが、飛行機の速度だったり、高度だったり、ヘディングなわけだ。
つまり、上の公式を日本語訳してやると、『水平線の位置と、パワーセッティングを決めてやれば、速度や高度は一つに決まる』ということだ。
言っとくけど、本当に水平線の位置で飛行機を操縦するんだよ。
基礎訓練の最初の最初で、巡航の特の水平線が、前面のウインドシールドの、どこに位置するのかを覚えるんだ。
同様に、上昇、降下、旋回、上昇旋回など全ての場合において水平線がどこにこないといけないのかを目に焼き付ける。
ここでちょっと回り道をして、論理的に理解したい人のために力学的に説明しよう。どうでもいい人は読み飛ばしてくれ。
これはこのサイトでの航空宇宙工学を読んでくれている人なら理解できるはずだ。飛行機に働く4つの力を覚えているかな?(参考:飛行機に働く4つの力)
力学的に、揚力は重力と釣り合ってるわけだから、縦の釣り合いの式で変数となるのは速度と揚力係数だよな。
L = 1/2 ρ V2 S CL が、飛行機の重量Wと釣り合うので、
W = 1/2 ρ V2 S CL
揚力係数ってのはつまるところ迎え角、ざっくりとピッチ角と言ってしまおう。
そんでもって横の釣り合いは推力と抗力が釣り合ってるから式はこうなるよな。
推力T = 抗力 1/2 ρ V2 S CD
この式の中での変数は推力とさっきの速度だよな。
つまり、ピッチ角と推力さえ与えてしまえば、航空機の全てのパラメーターが決定できるわけだ。
話を戻そう。なんでこんなことをわざわざ強調するのかというと、これを意識する操縦と、意識しない操縦じゃあ飛行機は決定的に違う運動をするからだ。
君たちにとって怖い話をすれば、パイロットの採用試験で操縦適性検査なんてものがあるよな?
シミュレーターをやらして見れば、このAttitude Flightをしてるやつかしてないやつかは一瞬で分かるんだ。
採用チームがまだ飛んだことのない人にこんなことを要求しているとは思えないけど。
飛行機の動きがどう違うのか言うと、このAttitude Flightをしていると、飛行機が安定している。
そりゃそうだ、飛行機の姿勢をある姿勢に決めるように操縦桿を動かすわけだ。姿勢を決めたらそこからはその姿勢が崩れないように操縦桿を動かす。
だから、後ろで乗ってる人にはとても居心地がいい。
じゃあ逆にAttitude Flightができてない人の飛行機はどう動くのか?
Attitude Flightってのを知らない人は、
高度や速度を定められた値に合わせようと操縦桿を動かす。
だから、高度が低くなるとすぐに操縦桿を引いちゃう。で、高くなろうとすると今度は操縦桿を押す。
そんなこんなを繰り返していると、勘のいいやつはすぐに高度計の針が動かないように操縦桿を動かせるようになる。
でも、高度計はキレイにピタッととまってるかも知れないけど、そのためにひっきりなしに操縦桿を動かしていれば、飛行機の姿勢はひっきりなしに動いているわけだ。
操縦してる本人は夢中になっちゃって気づかないんだけど、後ろに乗ってる人はもうゲロを吐いてる。
もしこれが『高度を正確に守って飛行するゲーム』だったら後者でいいかもしれないけど、プロのパイロットがすべき操縦はどっちなのかは自明だよな。
もちろんプロはこのAttitude Flightで全てのパラメーターをピタッと合わすんだけど。っていうか、Attitude Flightじゃなきゃ最後の正確なところが合わない。
このAttitude Flight。覚えておいて損はないよ。